日本大学アメリカンフットボール部の学生寮(東京都中野区)から違法薬物が見つかり、部員が逮捕された事件を受け、日大は8日、都内で記者会見を開いた。日大は、大麻とみられる植物片を発見してから警視庁に報告するまでに12日かかったことについて「部員に自首させたかった」と説明。さらに昨秋、「大麻と思われるものを吸った」と申告した部員がいたが、今年7月まで担当副学長に報告が上がっていなかったことも明らかになった。
林真理子理事長は会見場に入ると、報道陣に向かって一礼。会見冒頭、「心から深くおわび申し上げます」と謝罪した。その後、酒井健夫学長と元検事の沢田康広副学長が中心となって事件の経緯を説明した。
日大によると、6月30日に警視庁から、アメフト部寮で大麻の使用疑惑があるとの連絡があった。大学側が調べたが違法薬物は見つからなかった。7月6日にも警視庁から同様の連絡があり、日大側が「大学で調査させてほしい」と伝えると、「ゆだねる」と言われたという。同日、再度調べると、寮のベッドに備え付けられた収納箱の中から、茶葉のような植物片が付着したポリ袋が入った入れ物が見つかった。
理事長宛てに手紙 昨秋から情報提供
入れ物を回収した沢田副学長は「大麻かもしれない」と思ったものの、警視庁に報告したのは12日後の18日。遅れた理由について、質問が相次ぎ、沢田副学長は「我々は教育機関。学生にきちっと反省させて、自首させたいと考えていた。7月6日に本人にヒアリングしたが、自首できる状況ではなかった」と説明。警察の捜査に支障が出ると思わなかったのかと問われると、「そのようには全く考えなかった」と述べた。この判断について、林理事長は「学生を自首させようという気持ちに納得したので、隠蔽(いんぺい)という風には一切とっていない」と話した。
日大は、回収した入れ物を大学本部に保管して寮生への聞き取りを進め、13日に林理事長に、18日に警視庁に報告した。18日は、林理事長宛てに違法薬物に関する情報提供の手紙が寄せられ、林理事長が警視庁への連絡を指示していた。警視庁から大学に違法薬物と確認されたという連絡があったのは、学生寮が家宅捜索された8月3日だった。
日大はさらに、昨年にあった大麻疑惑についても説明した。
昨年10月29日、アメフト部の保護者会の後に、保護者から「寮内で大麻を使用していないか調査してほしい」という申し出があった。調査をすると、部員1人から昨年11月下旬、「大麻と思われるものを(昨年)7月ごろに吸った」という申告があった。
林理事長「私はスポーツの組織がわからない。遠慮があった」
部が警察関係者へ相談したところ、「物的証拠がなく立証が難しい」と言われたという。この部員を厳重注意処分とした。昨年12月10日には、アメフト部員に向けて薬物乱用防止講習会を開催。日大は「捜査に関わる」として、この部員が逮捕された部員と同一人物か明らかにしなかった。
この申告については、昨年12月に日大競技スポーツ部には報告があったが、担当の沢田副学長に報告があったのは今年7月初旬。沢田副学長は「報告しないようにしたということではないと思う。疑惑について調査した結果、事実は確認できなかったということで問題なし、ということで終了したものと認識している」と話した。
日大では2018年、アメフト部の悪質タックルが社会問題に。21年には田中英寿元理事長の脱税事件など、不祥事が相次いだ。昨年7月、作家で卒業生の林氏が「新生日大」を掲げ、理事長に就任した。
林理事長は「就任1年の会見で改革は6合目と話したが、かなり後ずさりしてしまった感は免れない」と述べた。「私はスポーツの組織がわからないし、はっきり言って遠慮があった。体制の欠陥の指摘を謙虚に受け止める」と話した。(狩野浩平、榊原一生、御船紗子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル