栃木県塩谷町の民家で12月、無職の斎藤光希容疑者(20)が同居する母親の麻由美さん(45)を殺害し、弟(17)にも大けがを負わせた事件。斎藤容疑者は長年、自宅に引きこもり、麻由美さんは関係機関に相談をしていた。また、事件直前には心配した麻由美さんと弟が斎藤容疑者に将来に関する話をしようとしていたことも判明。事件直前の家族のやり取りを含め、生活の実態が事件を解くカギになりそうだ。(根本和哉)
■家庭環境の変化
事件が起きたのは12月18日午後2時50分ごろ。斎藤容疑者に襲われた弟が隣家に助けを求めたことで発覚した。麻由美さんは頭などを刺された状態で自宅近くの民家の庭で発見され、その後、搬送先の病院で死亡が確認された。
斎藤容疑者は近所の民家に潜んでいるところを駆け付けた警察官に確保され、殺人未遂容疑で現行犯逮捕。県警は容疑を殺人に切り替えて捜査を続けている。
捜査関係者などによると、斎藤容疑者は、数年前から自宅に引きこもるようになり、その頃通っていた高校も中退したという。この時期、両親が離婚。斎藤容疑者は母と弟との3人暮らしとなった。
■自立を相談
斎藤容疑者は自室でパソコンに没頭。ゲームをするなどして一日を過ごし、自室から出ることはほとんどなかったという。自宅周辺は住宅街だが、近隣住民は「最近は姿を見なかった」と口をそろえる。
だが、家族はそんな斎藤容疑者に何もしていないわけではなかった。麻由美さんは息子に自立を促し、引きこもり問題を専門にする関係機関にも相談をしていたとみられる。一方、警察などへの相談はなかったため、捜査関係者は「過去に斎藤容疑者による家庭内暴力はなかったのではないか」とみている。それではなぜ悲惨な事件が起きたのか。
そこで注目されるのが、事件直前にあったとされる家族の会話だ。麻由美さんと弟が、斎藤容疑者と将来に関する話をしようとしていたという。詳細なやり取りは不明だが、この後、斎藤容疑者は凶行に至った。
ただ、斎藤容疑者の県警への供述は一定しておらず、「殺した理由もはっきりと説明できないようだ」(捜査関係者)という。宇都宮地検が宇都宮簡裁に求めていた鑑定留置が認められたため、今後は斎藤容疑者の刑事責任能力の有無を調べることになる。
■社会的支援は
元農林水産省事務次官が、自宅に引きこもっていた息子を殺害した事件は大きな注目を浴びた。引きこもりは全国に100万人いるとされる。
栃木県子ども若者・ひきこもり総合相談センターの中野謙作センター長は「引きこもりが起因する事件は、家族も含めた『孤立』が原因」と指摘する。いざ脱却を試みても、それを受け入れる相談窓口や働き口が不足しており、家族ごと追い詰められてしまうことがあるという。
そのため、中野センター長は「本人と一番一緒にいる家族を支えることから始めるのが基本。もっと気軽に相談できる環境を作ることが必要だ」と話す。
また、家族が「安心して引きこもれる環境」をつくることも重要という。中野センター長は「引きこもりを無理に追い出したり、強く否定したりするのは本人を追い詰めることになり、ますます逃げ場が無くなって逆効果となってしまう。家族が守ってくれるという安心感を持つことができて、初めて活動できるようになる」と指摘。家族が本人を理解することに努めてこそ、本質的な解決になると話した。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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