史上初めて核兵器を非人道的として違法化する核兵器禁止条約が22日に発効する。有志国とともに条約制定を先導したのが、2017年にノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)だ。条約の発効で世界はどう変わるのか。日本でただ一人の国際運営委員、川崎哲(あきら)さん(52)に聞いた。
条約は「核なき世界へのスタート」
――2021年は核兵器禁止条約の発効から幕開けすることになりました。
核兵器を全面的に禁止する国際条約が効力を持つ最初の年になります。条約を批准した締約国は、これからは核兵器を作ることも、持つことも、使うことも、頼ることもできなくなります。「核兵器なき世界」を目指すスタートです。条約発効を実現する大きな力になったのは「同じ苦しみを誰にも味わわせてはならない」と訴えてきた広島・長崎の被爆者。今後被爆者が直接体験を語ることができない日が来ても、この条約は残り、世界を縛り続けます。
――核保有国や「核の傘」などに依存する国は背を向け、「実効性がない」という見方もあります。
条約発効の影響は、批准国を縛る法的拘束力だけにとどまりません。核保有国は政治的、経済的、社会的な圧力に包囲されることになります。対人地雷やクラスター弾の禁止条約では、発効後、批准していない国でも兵器の生産、取引、使用が激減しました。新しい国際規範が成立したことで、金融機関が国際法で禁じられた非人道的兵器を作る企業への融資・投資をやめていったからです。核兵器がこれに加わります。そのような動きが進んでいるからこそ、核保有国が次々と条約を批判する声を上げています。それ自体が、この条約の実効性のあらわれだと言えます。
――安全保障の専門家は「桁違いの破壊力を持つ核兵器は、対人地雷やクラスター弾、生物・化学兵器と違って他の手段で置き換えられず、同列に考えられない」と指摘します。
同じ非人道的兵器でも、一人ひとりを傷つける対人地雷と、大規模に無差別に殺戮(さつりく)する核兵器とは次元が違うと言うのは一理あります。ただ、ほかの非人道兵器や大量破壊兵器は禁止・廃絶されるべきなのに、核兵器は許される、ということになれば、今まで人類が何のために特定兵器の禁止条約を作ってきたのか意味がわからなくなります。「核兵器は国家の安全保障の根幹」と主張する人もいますが、技術の発展により、国家の中枢を破壊しうる最大の脅威は今やサイバー攻撃になっています。核保有国も、現実に力を入れているのはサイバー対策です。核兵器はもはや「使えない兵器」であるうえに、誤って使用されるリスクが高まっています。時代は変わったのに20世紀中ごろの国家安保論が亡霊のように残っているのではないでしょうか。
日本の条約批准は幻想なのか。日本が核保有国と非核保有国との「橋渡し」を果たすために不可欠なものは―。川崎さんに詳しく聞きます。
――発効後の課題は何でしょうか。
100カ国・地域がこの条約を…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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