核兵器(かくへいき)を史上初めて非人道的で違法とする核兵器禁止条約が22日、発効しました。核兵器の使用、保有、開発、実験などを一切禁じる内容で、51の国・地域が批准しています。核兵器をめぐる世界の現状や条約の今後の課題などについて、Q&A形式で紹介します。
Q 核兵器禁止条約が発効したね。いま世界で核兵器は増えているの?
A 1945年8月に米軍が広島・長崎へ原爆を投下して以来、米国とソ連の冷戦時代に核軍拡競争が進んで、核弾頭(かくだんとう)の数は86年に約7万発とピークを迎えた。実は、それ以降は減ってきているんだ。
Q どうして?
A 本当に核戦争が起きるとの懸念が高まる中で、当時の米国のレーガン大統領とソ連のゴルバチョフ書記長が「核戦争に勝者はなく、その戦いはしてはならない」と合意。それが87年の中距離核戦力(ちゅうきょりかくせんりょく)(INF)全廃(ぜんぱい)条約に、91年には戦略兵器削減(さくげん)条約(START)につながったんだ。その後の新STARTでは、保有を認める核弾頭の数は両国で各1550、運搬(うんぱん)手段の数は未配備を含めて各800までと上限が下がった。
Q もっと減らないの?
A 核不拡散条約(NPT)は、米国、ロシア、英国、フランス、中国の核保有を認める一方で、誠実な核軍縮交渉を義務づけている。でも、米ロ関係の悪化もあって進んでいない。だから非核国や市民がしびれを切らせて核兵器禁止条約を生み出したともいえる。
Q 核軍縮は進むの?
A INF全廃条約は米国が脱退したため2019年に失効した。この条約のために米国とロシアが持てなかった中距離ミサイルを、中国が多数保有するようになって、東アジアの安全保障環境は冷戦期とは大きく変わった。2月に期限が切れる米ロの新STARTの延長だけでなく、中国も含めた軍備管理体制が欠かせない時代だといえる。
Q 先は長そうだね。
A 核保有国や日本政府は核兵器禁止条約に背を向けているけど、国際世論の高まりは政治的圧力にもなり、核軍縮にはずみをつける可能性を秘めている。諦めず、生かす知恵を絞りたいね。(編集委員・副島英樹)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル