長崎市の田上富久市長は29日、8月9日の平和祈念式典で読み上げる平和宣言の骨子を発表した。米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約の失効など核軍縮と逆行する動きに危機感を示したうえで、日本政府に対し、核兵器禁止条約への署名、批准を求める。
核兵器禁止条約は2017年、核兵器の保有や使用を法的に禁じるために国連で採択されたが、日本政府は署名、批准していない。
今年は広島市長も平和宣言で日本政府に核禁条約への署名、批准を求める方針。田上市長はこの日の記者会見で、「日本政府として核兵器のない世界について明確にメッセージを発信するべき時期だと思っている。広島と同時に訴えていることの意味も、くみ取ってもらいたい」と話した。
平和宣言ではこのほか、核大国である米ロの責任について言及し、核保有国を動かすには世論が重要であるとして、市民社会の行動を呼びかける予定だ。
安倍晋三首相が改憲論議を動かそうとする中、平和宣言の内容を議論する今年の起草委員会では、憲法9条を守るよう政府に訴えていくべきだとの意見が出ていたが、宣言では触れないという。田上市長は「憲法については様々な考え方がある。市民の代表としてどういう内容がふさわしいか考えた」などと述べるにとどめた。
今年の平和宣言では冒頭、17歳の時に被爆して大けがをし、家族を亡くした女性が詠んだ詩を引用する。宣言に被爆者の詩を引用するのは初めて。田上市長は「限られた枠内で被爆の惨状や被爆者の思いを伝えるためにふさわしい詩だと考えた」と話した。(田中瞳子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル