核廃絶願うバトン、つなぐ若者「私たちが社会変える番」

 「核兵器禁止条約に賛成ですか、反対ですか」。こんな質問を国会議員にぶつけて発信したり、条約発効に向けて世論を盛り上げるサイトを立ち上げたりしている広島出身の大学生がいる。22日には条約が発効した。「被爆体験がない自分に何ができるのか」。託されたバトンを未来につなぐため、手探りしながらも前を向く。

 慶応大学2年の高橋悠太さん(20)=横浜市=は元日、長崎や東京の若者たちと、ウェブサイト「すすめ! 核兵器禁止条約プロジェクト」を作った。条約の理念や発効までの経緯を色鮮やかな画像など使って発信。たちまち個人の賛同者は100人を超えた。

 条約発効を約1週間後に控えた14日、オンラインイベントを開き、「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」共同代表の森滝春子さん(81)=広島市=と対談した。世界各地の核の被害者とともに運動してきた森滝さんは、若者らにエールを送った。「なぜ彼らがひどい目に遭わなければいけなかったのか。みんなと議論し、悩み抜いてほしい。絶望することは許されない」

 母校の盈進(えいしん)中学・高校(広島県福山市)の「ヒューマンライツ部」時代に森滝さんと出会った。ウラン鉱山の労働者やイラク戦争で使われた劣化ウラン弾の被害者ら。当事者の視点で語る森滝さんの姿が強く印象に残った。

 自分でも被爆者を訪ねて回ると、家族との死別、就職や結婚での差別など一人ひとりに異なる絶望があった。「抽象的な『痛み』が、少しずつ自分にも置き換えられるようになった」

 一方で「もやもや」も募った。「政治を直接動かす活動も必要では」。核廃絶を考えるシンポジウムでそう発言してみたが、会場は静まり返った。共感を得られたとは思えなかった。

 大学では政治学科で学んでいる。社会問題について熱心に議論し、行動する友人も多い。それでも、同級生の一人に言われた。「核廃絶は夢物語だよ」。核をめぐる問題は数ある問題の一つに過ぎないのかと落胆した。

 そんな時、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長の言葉を思い出した。フィン氏は以前、広島のシンポジウムで、運動を続けている理由を軽やかにこう語ったことがある。「楽しいからです」

 そのICANは各国の政策決定者へのロビー活動で、条約の発効までの流れを作った。「自分の思いに素直になっていいんだ」

 さっそく、国会議員に核禁条約への賛否を尋ねて発信する「核政策を知りたい広島若者有権者の会」(通称「カクワカ広島」)の活動を本格化させた。国会議員らの立場を紹介するウェブサイト「議員ウォッチ」の運営にも携わり始めた。

 活動に対して、「被爆体験もないのに」「政治家頼みの活動」などの声があることも知っている。それでも先日の対談前、森滝さんがこんな言葉をくれた。「広島を気負いすぎないで」。高橋さんは思う。「被爆者が築いた平和運動に『新しいアイデアを』と託してくれた。私たちが社会を変える番だ」(比嘉展玖)

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 長崎出身の被爆3世で、上智大…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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