日本産科婦人科学会(日産婦)が進めていた新型出生前診断の検査施設拡大の動きに、厚生労働省が突如“介入”し、新指針が保留されることになった。施設拡大が安易な中絶を容認することにつながりかねないとの他学会の懸念は根強く、国として議論を主導せざるを得ないと判断したもようだ。日産婦は困惑を見せつつ、国が重い腰を上げたことを歓迎した。(伊藤真呂武、三宅陽子)
日産婦によると、厚労省から国の検討会の議論を踏まえた対応を求める通知が届いたのは21日午後。日産婦が22日の理事会で施設拡大に向けた新指針を正式決定する前日だった。「びっくりした」。通知を受け取った藤井知行前理事長は率直に打ち明ける。
日産婦が検査施設の拡大に動き出した背景には、数年前から横行する無認可施設での検査に歯止めをかけたいとの狙いがあった。説明が不十分なまま検査が実施され、染色体異常が疑われても別機関での受診を促すのみで、妊婦が混乱するケースも確認されていた。
検査の希望者は晩産化の進行に伴って増加しており、施設拡大は妊婦の求めに応じるものでもあった。
一方で、昨年9月までに認可施設で検査を受けて「陽性」が確定した886人のうち、9割以上が中絶を選択。施設拡大と比例する検査件数の増加が、「命の選別」となる中絶を助長するとの懸念は消えない。
日産婦の施設拡大方針に懐疑的な日本小児科学会などの他団体も、「障害がある子供を産むことはよくない」との考えが広まることや、遺伝に関するカウンセリングがおろそかになることを危惧していた。
国は胎児の異常を理由とした中絶を認めていない。ただ、母体の健康を害するなどとして中絶するケースも少なくなく、実際には妊婦の判断に委ねられている部分も大きい。
こうしたことから、国は個人の生殖をめぐる問題に関与することに慎重な姿勢を見せてきたが、学会間の対立が妊婦の不安をあおることを考慮し、対策に乗り出すことを決めた。
日産婦の藤井前理事長は「本来、医療は国が責任を持つもの」と国の動きを歓迎。無認可施設が横行する現状を踏まえ、「議論が長くなれば無認可施設も増えていく。一刻も早く終止符を打つようにお願いした。国も早く結論を出してほしい」と注文をつけた。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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