2月上旬、東京アクアティクスセンター。競泳ジャパンオープンは、復活を期す池江璃花子選手らの活躍に沸いた。
その会場で日本水泳連盟は、競技以外の質問を控えるよう報道陣に要請した。
東京五輪の大会組織委員会長だった森喜朗・元首相による女性蔑視発言の直後だった。要請の前日、報道陣が森発言をどう受け止めたか、ある選手に尋ねていた。報告を受けた連盟が問題視したという。
記者が後日、連盟に尋ねると、森発言への質問が要請につながったと認めた。
同じ頃、ある競技の現役選手やOBでつくる「アスリート委員会」で、オンラインの会議が開かれた。森発言が話題になった。
「委員会で反対の声明を出した方がいいんじゃないか」「アスリート自ら自浄機能を果たすべきだ」。委員からはこうした意見が出たという。
委員らは後日、所属する競技団体と協議し、声明は見送られた。委員会メンバーの一人は「本来はアスリートが意見をきちんと伝えないといけないのに、発信すると競技団体に悪い影響が出かねないよね、となってしまった」と明かす。
競技団体事務局は取材に、委員会に再考を促したと明かす一方、声明を出すかどうかへの働きかけは否定した。
スポーツ界全体を揺るがせた森氏の発言。多くのアスリートが口を閉ざす中、SNSでの議論に参加したあるメダリストの思いとは。聖火ランナーの辞退を伝えたところ、県から送られてきた驚きのメールについても、記事後半で当事者が語ります。
「次にふさわしい会長像は」 五輪経験者、閉ざされた場なら
2月上旬の夜。社会起業家の安部敏樹さん(33)が、音声SNS「クラブハウス」で「ルーム」を開くと、複数の五輪経験者が参加した。
クラブハウスは、知人に招待された人のみが参加できる。録音や文字起こしが原則禁じられ、会話の記録は残らない。
閉じられた空間での議論は深…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル