大村美香
消費者庁と国民生活センターは21日、葬儀で遺体を保冷するドライアイスから発生した二酸化炭素による中毒死が疑われる事例があるとして、再現実験の結果を公表した。故人との別れの際に棺(ひつぎ)の中に顔を入れないよう、呼びかけている。
消費者庁によると、死亡事故は2020年と21年に宮城、宮崎、沖縄の3県で計3件起きた。2件は自宅や葬儀場でドライアイスを敷き詰めた棺の中に顔を入れた状態で発見され、1件は棺の小窓を開けたそばで倒れていた。詳細は不明だが、いずれもドライアイスによる二酸化炭素中毒が疑われるという。
国民生活センターでは、棺に人形と10キロのドライアイスを入れ、内部の二酸化炭素濃度を測定する実験をした。
開始から20分後には、二酸化炭素濃度が、ほとんど即時に意識消失するとされる30%を超えた。4時間後には90%前後で一定となった。
棺のふたを開けると、直後に濃度は約90%から約60%に下がったが、約50分後にも30%以上を維持していた。二酸化炭素が空気よりも重く、棺の中にとどまりやすいためとみられる。
事故の背景には、葬儀は非日常的で、ドライアイスが気化して二酸化炭素が充満していることの危険性が遺族らに認識できていない状況があると考えられるという。
消費者庁と国民生活センターは「棺の中には高濃度の二酸化炭素がたまっている。吸い込まないよう、安置されている遺体にお別れを言う際にはひつぎの中に顔を入れないで」と呼びかけている。また、室内の換気を十分にし、通夜から告別式の間に寝ずの番をする時には、万が一に備えて複数人で見まもるようにとしている。
万一気分が悪くなったら、すぐに棺から離れ、異常があれば直ちに119番通報するよう求めている。(大村美香)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル