白石和之
子どもの遊びや学びを豊かにする発明のアイデア動画を新潟県長岡市の団体が募ったところ、全国の若者から83件の応募があった。料理のお手伝いにもってこいの計量器、成り立ちを学べて漢字が覚えやすくなる勉強アプリ……。力作ぞろいの発明の中から小学生がグランプリに選んだのは、ただ話を聞いてうなずいてくれる花の形のロボット「Ohanashi(おはなし)」だった。
団体は、「若者が働く魅力創出」を目指して市内の4大学、1高専、15専門学校と企業や市でつくる「ながおか・若者・しごと機構」で、昨年、「米百俵デジタルコンテスト」と銘打って動画を募集。全国の高校生や大学生、20代前半の社会人らから続々とアイデアが届いた。
アートディレクターや人工知能を活用するベンチャー企業の社長、研究者らによる1次審査を11作品が通った。「はかーる君」と名付けられた計量器はカップやスプーンの使い分けが不要の優れもの。削った鉛筆の量や色に応じて本体画面上の木の育ち方が変化する鉛筆削り器や、スマートフォンを振るとおみくじで家族の家事分担が決まるアプリなども。中には実際に試作されたものまであった。
続いて市内にある小学校3校の4~6年生298人で投票が行われた。その結果、Ohanashiが半数近い得票でグランプリに選ばれた。
共感・すごい・うれしい…花びらの色変え反応
崇城(そうじょう)大(熊本市西区)で地域活性化のためのデザイン活用などを学ぶゼミの4年生、栗川詩加(うたか)さん、岩永菖さん、木村真琴さんの3人が考案した。植木鉢の花に話しかけると、その内容に寄り添うように花びらの色が変わる。「共感」は黄、「すごい」は赤、「うれしい」はピンク、「悲しい」は青、「びっくり」は紫。それぞれの色と連動して葉が上下に動く。
「心のもやもやを話せば自分の感情が晴れる」(4年生)、「コロナ禍で話があまりできない人もいる」(同)、「他人に話せないときでも自分の気持ちをわかってくれる」(5年生)――。児童たちは選んだ理由にこんなことを挙げた。
大人の審査員たちも「小学生の意見を読むと、感情を分析してアクションを起こしてほしいのではなく、ただ話を聞いてうんうんと相づちを打ってくれる相手を求めているようだ」「自分自身、子どもの話を聞いてあげなければと再認識させられた」「大人の視点とは違い、面白さを感じた」などと評価した。
Ohanashiには質問に答える機能もあるが、「子どもたちは難しいことではなく話を聞いてくれることを評価してくれた」と栗川さん。「機械っぽくないビジュアルにも気を配った。選ばれると思っていなかったのでびっくりした」と喜んだ。(白石和之)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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