楽天の検査キット販売一時中止、背後に医師会との対立再燃(ニュースソクラ)

【解説】また苦杯の三木谷社長、周到な挑戦なのにスキャンダルの誤算

 話題となっていた楽天の新型コロナウイルスに関するPCR検査キット販売が、30日取りやめとなった。楽天は「ジェネシス社の取締役会にて経営体制の変更が決議されたとの報告を受けた」と言うが、4月28日の文春オンラインで、検査キットを開発し、楽天が出資するジェネシスヘルスケア社の社長に経歴詐称と報じられたのを受けた措置だろう。

 しかし、このPCR検査キットには日本医師会からの強い批判もあった。取りやめに至った背景には、そうした方面からの妨害も影響した可能性が大きい。

 楽天が売り出したPCR検査キットはどのようなもので、どんな問題点があったのだろうか。まとめてみよう。

 4月20日、楽天は法人向けに新型コロナウイルスのPCR検査キットを販売すると発表した。だが2日後、日本医師会は会見を開き、釜萢敏常任理事は「大変危惧の念を抱いている」と述べ批判した。

 このPCR検査キットは、楽天が作ったものではなく、出資している遺伝子検査のジェネシスヘルスケア社が、医療法人社団創世会の協力を得て開発したものだ。もともとは楽天グループ従業員及び関連パートナー企業従業員の状況把握を目的に開発されたが、20日には東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県の法人向けに提供開始すると発表があった。楽天はあくまで「販売の窓口」という立場だ。

 検査方法については、厚生労働省と相談を重ね、国立感染症研究所のPCR検査法を厳守したものとなっているという。キットを開封後、鼻ぬぐい液(鼻の奥から採取する液)を自分で取り、キットの防漏性容器に入れる。

 それから三重密閉できる封筒に入れ、2時間以上経過したのち、法人指定場所に設置してある回収ボックスに入れる。ジェネシスヘルスケア社がそれを回収し、最短即日から3日以内(土日祝除く)で結果が出るという。

 定価は1キット14,900円(税込)で、100キットから注文を受け付ける。20日に「新型コロナウイルス検出試薬キット」を発売した島津製作所は100検体分で225,000円だった。楽天の検査キットは高くないか。

 楽天広報担当者によると、「PCR検査の一般的な費用としては、検体輸送を伴う場合、検査費用は保険適用前で約18,000円前後といわれており、一般的なものに比べて価格も抑えられている」という。

 では日本医師会は楽天の検査キットのどこがダメだというのか。医師が検体を取る検査でもミスは起きており、医師でなければ検体が取れないというのもおかしな話だ。

 日本医師会に取材を申し込むと「電話やメールでは取材を受け付けない」と断られた。郵送の「依頼状」を受理し、医師会の決済を経てようやく取材の日程調整ができるという。いくら連休中とはいえ、この状況下でかなり悠長な対応だ。

 22日の会見では、「検体の採取の方法が不適切であれば結果は信頼できないものになる」や「偽陰性で職場に出たら、周囲に感染を拡大させる」と述べていた。

 この批判に対し、楽天広報担当者は、陽性でなかったから外出してよいわけではないという前提を踏まえた上で、「イラスト付きガイドに従って採取いただくことで、正確に検査いただけるようにご案内しているほか、動画マニュアルもご案内予定です」と答えた。

 科学的根拠の明示はなかったが、「アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のプロトコールも参考にすることで、国際基準に照らし合わせながら、検査精度を向上させているとも聞いています」とジェネシスヘルスケア社から受けたと思われる説明を加えた。

 ジェネシスヘルスケア社にもメール取材を申し込んだが、返答はなかった。

 そもそも日本医師会と楽天には因縁がある。2014年、薬事法改正案成立に伴う一般用医薬品(OTC薬)のインターネット販売解禁について、全面解禁を求めた楽天の三木谷浩史社長と、猛反発した日本医師会には大きな溝ができていた。

 結局厚生労働省定めた改正案に不満だった三木谷楽天社長は政府会議の民間委員を辞任した経緯がある。今度こそ、楽天は勝ちたかったはずだ。

 しかし、楽天のPCR検査キットを開発したジェネシスヘルスケア社に疑念が生じた。4月28日の文春オンラインによれば、同社の佐藤バラン伊里・代表に経歴詐称疑惑が上がっている。これを受け、楽天関係者は「命に関わる医療でウソはあってはならない。現在、佐藤氏を退任させる方向で調整しています」と話していた。

 30日、楽天はPCR検査キットの販売を見合わせると発表。「ジェネシス社の取締役会にて経営体制の変更が決議されたとの報告を受けた」結果だという。「一時的に販売を見合わせる」と言っているが、果たして再開できるのか。日本医師会との対立からこの結果はある程度予想されたが、またしても楽天は苦汁を飲まされた。

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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