戸田和敬
四国電力が再稼働をめざす伊方原発3号機(愛媛県伊方町)をめぐり、広島県と愛媛県の住民7人が運転差し止めを求めた仮処分について、広島地裁(吉岡茂之裁判長)は4日、申し立てを却下する決定を出した。
「差し止めならず」。広島地裁前で住民側の弁護団らがそう伝える旗を掲げると、申立人らからは落胆の声が広がった。
住民側は決定後に記者会見した。代理人の河合弘之弁護士は「常識に基づき、分かりやすい問題提起をしたのに科学技術論争に持ち込まれた」と話した。
住民側は原発の技術論ではなく、原発の耐震性の面から運転停止の必要性を簡潔に訴える「樋口理論」を展開した。原発の安全確保に欠かせない「止める、冷やす、閉じ込める」という3原則を、地震などの自然災害に遭ったときに維持できるのか。電力会社が想定した地震の最大の揺れである基準地震動を基にした設計は、耐震性が十分かを問うものだ。
地裁の決定は、住民側に具体的な危険性の立証を求める内容だった。河合弁護士は「住民側に詳細な地盤特性などを調べて比較することなど不可能なことだ」と憤る。住民側の理論を考えた樋口英明さん(69)は元判事で、福井地裁の裁判長として2014年、関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた。「負けることは想定していなかった。住民側に無理難題を押しつけている。高裁で理論が通り、原発訴訟のパラダイムシフトになることを期待する」と話した。(戸田和敬)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル