横浜市鶴見区で2018年、4歳の男児が同居する男に暴行されて死亡したとされる事件で、市が亡くなる20日前の家庭訪問で男児のけがを確認したのに、一時保護の判断をしていなかったことが情報公開請求でわかった。市は事前に「傷やあざがあればすぐに保護する」と確認していた。
また、家庭訪問は複数の職員で行うと市の内部マニュアルで規定されていたが、1人だけで行っていたこともわかった。
市が2日、朝日新聞の情報公開請求に応じ、18年8月にあった内部検証委員会の資料の一部を公開した。この事件では、男児と同居していた内田正也容疑者(30)が18年1月23日、男児に何らかの暴行を加え、死なせたとして、今年8月に神奈川県警に傷害致死容疑で逮捕されている。逮捕時、容疑を否認していたという。
市が公開した文書などによると17年9月21日、男児が通う保育所が鶴見区に「直近1カ月で4回の傷やあざがある」と電話で通告。10月25日には鶴見署が中央児童相談所に虐待の通告をした。
これらの通告を受け、12月25日に児相職員が母親を家庭訪問した。28日には、男児に小さな傷やあざがあれば、すぐに男児を保護することを児相と区が確認。だが、18年1月5日に区職員が男児にけががあるのを確認し、報告したが、児相は一時保護が必要との判断をしなかった。児相や区、県警、保育所など関係機関が情報を共有し、対応を協議する「個別ケース検討会議」も開催しなかった。
その後、児相は18日に「同居男性による身体的虐待」と認定したが、その1週間後の25日に男児は死亡した。検証委は「個別ケース検討会議が開催すべきタイミングで開催されず、関係機関で支援方針を共有できなかった」と指摘。市は、今後の捜査状況をふまえて外部の有識者による検証も行う方針だ。
山中竹春市長は8月30日の定例会見で「守れたかもしれない命が失われたことに関して市の責任を受け止めている」と語った。事件をふまえ、児相の職員の増員をはかるなどの体制強化をしたとして「現在は改善されている」とした。(土居恭子、小林直子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル