新型コロナウイルスの消毒方法として、家庭やオフィスでよく使われるアルコール以外にも、柿渋や紫外線、オゾンなど、効果があるという研究成果が発表されています。次々に出てくる方法の有効性や安全性は、どう判断したらよいのでしょうか。
新たな「消毒」方法、続々発表
奈良県立医科大の研究チームは9月、柿渋によって新型コロナウイルスが感染力を失うとの研究結果を発表した。柿渋は、熟していない渋柿をしぼり取って発酵させたもので、木材の防腐剤や織物の染色などに使われている。発表によると、試験管に新型コロナウイルスと唾液(だえき)、柿渋を入れて実験すると、ウイルス量が1万分の1以下に抑えられたという。
柿渋の成分である柿タンニンは渋柿だけでなく、甘い柿にも含まれているが、溶け出さない形になっている。新型コロナの感染力を失わせるには、高濃度の柿タンニンが一定の時間にわたり接触している必要があるとみられ、柿を食べてもウイルスを減らす効果は確認できていないとしている。
奈良県立医大はほかにも、オゾンガスや光触媒を使って、ウイルスの感染力を失わせる研究結果を発表している。新型コロナウイルスをオゾンガスにさらすと、最大で約1時間で1万分の1以下にウイルス量を減らせたという。光触媒は、酸化チタンなどの物質で、光をあてるとさまざまな物質の分解を促すはたらきを持つ。これを利用すると新型コロナのウイルス量が99%以上減少したという。
広島大とウシオ電機(東京都)などの研究チームも9月、一部の紫外線が新型コロナウイルスの感染力を失わせる効果を確認したと発表した。乾燥したプラスチック上の新型コロナウイルスに、人の皮膚や目に影響が少ないとされる紫外線を30秒間あてると、99・7%の割合で感染力を失わせる効果があったという。
徳島大も10月、紫外線の中でもエネルギー量の大きい「深紫外(しんしがい)線」を出すLEDで、新型コロナウイルスの感染力を失わせる効果や、どの程度の時間やパワーによって効果が異なるかを確認したと発表した。宮崎大も医療機器メーカーと共同で、深紫外線LEDの光をあてると新型コロナウイルスが感染力を失うことを確認したと、5月に発表した。
多くの大学がめざすのは、得られた研究結果を速やかに産業利用に結びつけることだ。企業と共同で研究や商品開発を進める大学もある。奈良県立医大は、細井裕司学長が理事長を務める一般社団法人「MBTコンソーシアム」が産業利用の旗振り役となり、柿渋の研究結果をもとに製品を共同開発する企業を募るなどしている。奈良県立医大の担当者は「医薬品だけでなく、すべての産業に医学の知見を取り入れてもらい、コロナ禍の社会に役立つものを届けていきたい」と話す。
■アルコールの代替品として研究…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル