東京都武蔵野市が市議会に提案した住民投票条例案への反対運動が激しさを増している。多様な声を市政に反映したいとして、外国籍の住民の参加を認める内容だ。反対派は「外国人参政権の代替になり得る」と主張する。同様な条例が既にある中、なぜ過熱するのか。
市役所周辺で大音量の街宣車
「民意そのものがゆがみかねない」。同市を含む選挙区が地盤の長島昭久・衆院議員(自民)が9日朝、JR吉祥寺駅前でこう訴えた。自民系会派の市議も条例案への反対を訴えた。自民系会派代表の小美濃安弘市議は「条例案を出し直させたい」と話す。
条例案はその都度、条例を定める「個別型」でなく、投票資格者の4分の1の署名があれば議会の可決なしに実施できる「常設型」。市長・議会の「二元代表制」を補完する意義がある。13日の市議会総務委員会で採決される。
反対派が問題視するのは、18歳以上で市の住民基本台帳に3カ月以上続けて登録されている者という参加要件に外国籍住民が含まれている点だ。市長選などでの参政権がないのに住民投票に参加を認めれば、民意がゆがむというのだ。
長島氏は「外国籍の住民は少なくとも3年以上、市内に住む人という要件は必要」と訴える。議論が不十分だとして「拙速だ」とも批判している。
松下玲子市長は「条例案は多様性を認める社会につながる」と意義を強調する。「拙速」との批判には市は数年前から議論を重ねていると反論する。今年3月のアンケートでは外国籍の住民を投票資格者に含めることに73・2%が賛成だった。
保守色の強い自民党国会議員らでつくる団体は9日、「外国人参政権の代替になり得る」として反対する声明を発表した。
さらに、市役所周辺では街宣車が大音量で反対を訴え、排外主義的な団体も「自治体乗っ取り条例」などと声を張り上げてきた。一方、賛成派は愛敬浩二・早稲田大教授や上野千鶴子・東大名誉教授らが名を連ねた声明を11月に発表し、「威圧的な宣伝や脅迫まがいの行動が跋扈(ばっこ)している」と指摘。外国籍住民の声が反映されれば「地方自治を深化・発展させる」と強調している。
市内の男性(35)は「こういう制度がなければ外国籍の方が意見表明する場はない。むしろ必要な制度」と話す。パート勤務の女性(64)は「長く住まないと地域のことは分からない」と反対だった。(宮野拓也、井上恵一朗)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル