3年前、83歳で亡くなった永六輔さんの『大往生』。刊行から四半世紀を経てなお刷りを重ねるベストセラーは、高齢化がさらに進む社会に問いかけ続ける。あなたはどう死にますか。それまで、どう生きますか――。
いちどは断られたが
「ありがとう。でも本を書くというのが苦手で……。ラジオ屋の永六輔」
1992年5月、岩波新書の編集長だった坂巻克巳さん(72)のもとに、はがきが届いた。文面はこれだけ。執筆依頼への返答だった。
「社員食堂での会話がきっかけです。前夜のテレビ番組で永さんが『明るい死に方講座』という題で話した内容が面白くて。笑わせて泣かせる話だった。同僚もたまたま見ていて、ぜひ本にすべきと言ってくれた」
いちどは断られた坂巻さんだが、なんとか面会をとりつけたとき、永さんはすっかり乗り気になっていた。現在まで101刷、累計245万部という岩波新書最大のヒット作りはこうして始まった。
「当初は死に方に絞ったのです…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル