岩田恵実、鶴信吾、吉沢英将
11日夕、東京都千代田区の都道(内堀通り)で、個人タクシーが歩道にいた人らを次々にはねる事故があった。女性1人が死亡し、男性運転手(64)は意識不明の重体。乗客や自転車に乗っていた人もけがを負った。
ゲストの識者を見送るため、歩道に
亡くなった小林久美子さん(73)は、性差のない社会をめざす区内の民間団体の役員だった。
団体のメンバーによると、この日は現場近くの千代田区役所で会合があった。事故当時、小林さんはゲストの識者を見送るために歩道にいた。空車のタクシーを拾おうとして、事故に巻き込まれた可能性が高いという。
現場に駆けつけたこのメンバーは「歩行者が歩道でタクシーを待つのは当たり前のこと。こんな危険な目に遭うなんて信じられない」と話し、「何と言ってよいかわかりません」とぼうぜんと立ち尽くしていた。
事故から40分後に現場を通りかかった40代女性は、タクシーが歩道の街路樹に突っ込んでいるのを見て事故に気づいた。
近くの路上にはけがをした男性が座り込み、運転手とみられる男性も仰向けになっていた。数十メートル先には子どもと保護者とみられる2人が倒れていた。救急隊員はこうした人の手当てをしたり救急車で搬送したりしていたという。
女性は自宅と図書館の往復のため、現場の歩道を使うことがある。付近は生活道路だといい、「身近な場所でこんな事故が起きて驚いた。とても怖い」と話した。(岩田恵実、鶴信吾、吉沢英将)
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タクシーが歩行者などを巻き込む事故は後を絶たない。
東京都内では1月、渋谷区の甲州街道でタクシーが横断歩道にいた6人をはね、1人が死亡、5人が重軽傷を負った。男性運転手はくも膜下出血を起こしていた疑いがあり、長期入院の末に死亡した。
国土交通省によると、2018年にタクシーやトラック、バスの運転手が健康状態が悪化して事故を起こしたり、運転をやめたりした例は363件あった。13年は135件で、5年間で約2・7倍に増えたという。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル