ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王が23日に来日する。掲げたテーマは「すべてのいのちを守るため」。焦点の一つが、死刑制度だ。61年前に来日し、教誨(きょうかい)師として死刑囚との対話を続けてきたハビエル・ガラルダ神父(88)は、キリスト教徒が少ない日本においても、法王の言葉は届くはずだという。なぜか。
〈ハビエル・ガラルダ神父〉 1931年、スペイン生まれ。宣教師として来日し、上智大学教授を務める。著書に「自己愛とエゴイズム」など。2018年、瑞宝小綬章受章。
――受刑者の心と向き合う教誨師を長く務めてきました。
「1994年から東京の府中刑務所で、主にスペイン語や英語を話す外国人受刑者の教誨師を務めています。2000年からは小菅の東京拘置所で、日本人の死刑囚とも話をしています」
――死刑囚とどんな話をするのですか。
「彼らに家族や友人が面会に来ることはめったにありません。人と話す機会がほとんどないので、月1回、1人30分の面会を楽しみにしています。話すのは、神様について、哲学について……。『死んでからどうなりますか』と聞かれることもあります。とても深い話をします。歴史にとても詳しい人もいます。歴史に興味を持った理由を聞くと、『私たちには将来がないから』と言いました」
――みな、罪を悔い改めているのでしょうか。
「どんな罪を犯したのか、私から聞くことはしません。彼らも細かくは話しませんから、具体的には知りません。でも話をしていると、心がきれいになってきているのを感じます。彼らは私と話すときは聖書とノートを持ってきて、一生懸命、神様の言葉を記しています。たくさん本を読み、とてもよく考えているから、鋭い質問も多い。私が学ぶことも多くあります。彼らは悔い改め、改心していると感じます」
――執行に立ち会うことも?
「執行がある時は前の晩に連絡があります。『明日執行ですが来られますか』と。10年ほど前のことですが、朝、執行前にミサをしました。彼はとてもしっかりしていて、聖書を読み、5分ほど話をしました。『ありがとうございます。みなさんゆるしてください』と言ってから、ドアの向こうに行きました。その後、遺体と対面し、簡単な葬儀をしました」
――日本は先進国では数少ない死刑制度のある国です。多くの国民が、制度を支持しています。
「難しい問題です。もちろん、彼らは悪いことをしたから死刑を宣告されたのでしょう。でもなぜ、国に命を奪われなければならないのでしょうか。死刑囚は話もできず、ずっと一人だから、すぐにでも死にたいはずだと考える人が多いかもしれません。でも実際は違います。みな、生きたいのです。恩赦に期待する人も、一生刑務所から出られなくても生きていたいという人もいました。私は死刑制度はやめた方がよいと思う」
――被害感情を考えると、死刑制度は必要との声もあります。
「それでは『復讐(ふくしゅう)』と同じではないでしょうか。
復讐していったんは気持ちが落…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル