昨年から今年にかけての記録的な暖冬が、海中の様子に変化をもたらしている。静岡県伊豆半島周辺海域では海水温が下がらず、「死滅回遊魚」とも呼ばれる南方種の幼魚が冬を越した。中には2度の冬を生き延び、南の海でしか見ることのできない姿になった魚もいる。
3月14日、同県沼津市の人気ダイビングエリア大瀬崎に、地元ガイド熊谷翔太さん(24)の案内で写真家の堀口和重さん(33)と潜った。「2度の冬を生き延びたアザハタがいる」との情報を確かめるためだ。
水深20メートル付近で目指す魚を見つけた。体長は約30センチ。鮮やかな赤い体色と目の上が盛り上がる特徴からアザハタに間違いない。本来、この時期、この海にいるはずのない魚だ。
アザハタは、成長に伴い体色を変化させる特徴がある。夏から秋にかけて、生まれたばかりの幼魚が流れ藻などと共に黒潮に乗って琉球列島などから伊豆にやってくる。体長は約4センチ。体色は青みがかっている。成長と共に体色は青から赤に変わるが、伊豆海域では2月から3月の海中の厳寒期、水温が14度前後になるのに耐えられず幼魚のまま死滅してしまう。このような南方種を「季節来遊魚」あるいは「死滅回遊魚」と呼ぶ。
同県沼津市の水族館「伊豆・三津シーパラダイス」魚類飼育マネジャーの水野晋吉さん(47)は写真を見てアザハタと確認。「2度冬を越した個体である可能性が高い。本来、あり得ないことだ。年々海水温は上昇しており、南方種の越冬に限らず、これまで見ることがなかったサンゴなども見られるようになった。伊豆の海は確実に変わってきている」と話した。
気象庁海洋気象情報室によると…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル