谷瞳児、多知川節子
赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に遺棄したとして、丸亀市の夫婦が9月、香川県警に死体遺棄容疑で逮捕され、その後に不起訴になった事件をめぐり、妻の弁護人を務めた佐藤倫子弁護士が14日、県警に抗議文を提出した。「死産で行政に対応を相談しており、事実を隠していなかった。逮捕は早計」などと訴えている。
両親から依頼を受けて会見を開いた佐藤弁護士によると、妻は妊娠に気づかないまま9月21日未明に死産。かかりつけの産婦人科を受診しようとしたものの当面休診しており、診察が再開され次第、遺体を医師に見せて指示を仰ごうとしていたという。
遺体の腐敗を心配した夫が22日に冷蔵庫に保管することを提案。24日朝に1歳の子を保育所に預ける際、死産についても伝えた。
同日午前、役場の担当者から夫に電話があり、経緯や冷蔵庫に保管していることも自ら説明し、必要な手続きを尋ねたという。約3時間後には丸亀署員らが自宅を訪問。夫婦は任意同行され、夜に逮捕された。
佐藤弁護士は「死産がわかった時点で救急車を呼ぶなどできればよかったが、ベストの選択ができなかったからといって罪に問われるようなものではない」と主張。「死産はどの家庭、どの女性にも起こりうる。判断に迷う間に突然逮捕されては安心して生活できない」と訴えた。
また、逮捕時の実名報道をきっかけに、ネット上で夫婦の個人情報が拡散され、多数の誹謗(ひぼう)中傷を受けていると指摘。県警による実名発表と、報道機関による実名報道に対しても抗議した。赤ちゃんの死体遺棄事件で不起訴になった他の例も挙げながら、「流産がありえる、事件性がわからないなどの場合は慎重に判断すべきだ」としている。
県警は「抗議文の内容を確認した上で適切に対応したい」とコメントした。(谷瞳児、多知川節子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル