殺処分されたヒョウと飼育員の苦悩 子どもたちに伝えるアニメを制作

宮坂知樹

 太平洋戦争中に殺処分された動物と飼育員の姿を描いた短編アニメを、天王寺動物園大阪市天王寺区)が今月から上映している。終戦から78年を迎え、身近な動物園の悲話を通じて子どもたちに戦争を知ってほしいと、大阪国際平和センター(ピースおおさか、同市中央区)が制作した。9月10日まで。

 天王寺動物園では戦時中、エサ不足や空襲で多くの動物が死んだ。1943年9月~44年3月には、ヒョウやライオン、トラ、ホッキョクグマなど10種26頭が、「空襲でおりが壊れて逃げ出す危険がある」として殺処分された。

 約20分間のアニメ「どうぶつたちのねがい」は、殺処分されたヒョウと飼育員・原春治さんとの実話を基に、ピースおおさかが昨年制作した。過去に動物園が作って所蔵していた紙芝居から題材を得た。

 戦時中、毒入りのエサを食べた猛獣が次々と死ぬ中、原さんが我が子のように育てたヒョウはいつまでもエサに手をつけなかった。やむなく、ロープで首を絞めて殺すことに。自ら手をかけられなかった原さんに代わり、ヒョウは別の飼育員に殺された。おりには、もがき苦しんだ爪痕が残っていた――。そんなストーリーだ。

 ピースおおさかの田中優生専門職員は「戦争の犠牲になったのは人間だけではない。身近な動物園の話を通して、子どもたちに戦争について考えてほしい」と話す。

 動物園では8月11日~9月10日、企画展「戦時中の動物園 ~どうぶつたちのねがい~」を、学習施設「TENNOJI ZOO MUSEUM」で開催。殺処分された動物の剝製(はくせい)などを展示し、アニメを午前9時半~午後4時45分(ナイトZOO実施日は午後8時45分まで)に常時上映する。問い合わせは同園(06・6771・8401)へ。(宮坂知樹)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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