フィリピン・ネグロス島を有機野菜生産の拠点に――。そんな構想を実現しようと、熊本県天草市の企業が動き始めた。視線の先には、フィリピンの広大な農地を生かした有機種子の採取という、日本で成し得なかった夢がある。
企業は種苗や農業資材の販売業を営む光延農園。昨年1月、国際協力機構(JICA)の「普及実証事業」を受託し、JICAから支給された3千万円を元手に、ネグロス島の西ネグロス州でベビーリーフの有機栽培や普及指導、有機種子生産の事業化の可能性を探ってきた。
ベビーリーフは、ミズナやルッコラなどの若い葉の総称で、種をまいて10~30日で十数センチに伸びた葉を刈り取る。栄養価が高く短期間で育ち、一年中収穫できるのが強みだ。
西ネグロス州はサトウキビの一大産地だが、砂糖価格が暴落するたび住民の生活は打撃を受けてきた。そのため、同州は「砂糖の島から有機野菜の島への転換」を掲げ、砂糖産業への依存からの脱却をめざす。
光延農園の光延啓人社長(48)が昨年8月に同州を訪問した際、面会したエウジェニオ・ホセ・ラクソン州知事は、州の方針と一致するとみて光延農園の取り組みに全面協力を約束したという。
光延農園は創業70年以上の歴史を持つ。天草市では近年過疎化が進み、農家が減少。光延さんも危機感を強めていた。「企業として成長するには海外への事業展開も」。そんな思いでいた2016年ごろ、打診を受けた。
「ネグロス島を有機野菜生産の拠点にしませんか」
打診したのは、有機ベビーリー…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル