知能犯罪やサイバー犯罪など巧妙化する犯罪を摘発しようと、高度な専門知識や技術を持つ民間出身者らが警察官に転身し、活躍している。採用数は多くはないものの、各地の警察で継続的に採用されており、年々存在感は高まっている。大阪府警では今年、公認会計士を採用。金の流れの分析などを担当する財務捜査官が20年ぶりに誕生した。(北野裕子)
「自らの知識や経験を経済的な不正を暴くことに生かし、一つでも多くの事件を解決したい」
こう意気込むのは今春、大阪府警に財務捜査官として採用された浜本典彦警部補(39)。公認会計士の資格を持ち、大手監査法人に11年間勤めた経験を持つ。
財務捜査官は決算書や帳簿などの財務資料を読み込んで分析し、不正などを見抜く専門捜査官。警察庁によると、民間出身者を新たに採用するだけではなく、捜査員が試験を経て専門捜査官になるケースもある。現在、府警や警視庁など14都道府県警察で48人が働いているという。
財務捜査官が誕生したのは平成6年ごろ。住宅金融専門会社が巨額の不良債権を抱え、公的資金が投入される事態に発展した住専問題をきっかけに、経済事件が増加、巧妙化して大きな広がりを見せたためだ。
帳簿読みなどにたけた捜査員もいたものの、より専門的な財務捜査を行うための体制を確立しようと採用が始まったという。大阪府警も同年から採用を始め、これまでに7人を採用。捜査幹部は「従来の詐欺や贈収賄事件に加え、電子マネーや仮想通貨など、経済事犯も複雑、多様化している。知識を更新し、流行を知る必要がある」と話す。
浜本警部補は警察学校で1カ月間学んだ後、大阪市内で交番勤務をしている。今後、本格的に財務捜査官として活動する予定だ。前職では財務諸表調査や監査業務などに携わってきたといい、「背任や横領など、幅広い事件の解決に携わりたい」と話す。
専門捜査官はほかにもいる。インターネットの普及により急速に犯罪が多様化し、大きな被害にもつながるサイバー犯罪を捜査するサイバー犯罪捜査官もその一つだ。
7年から採用が始まり、昨年4月時点で全国29の都道府県警察で168人が勤務。府警では11年からこれまでに8人採用した。いずれもIT関連企業などでの勤務経験がある。
捜査幹部によると、「1時間単位で技術が変わる」という世界。暗号資産(仮想通貨)の登場などめざましいスピードで技術や犯罪態様も変化しており、法律が追いつかず、捜査手法が確立されていないケースも多い。サイバー犯罪捜査官らであっても、採用後に民間企業などに学びに行くなど日々研究を続けている。
近年では特殊なサイバー犯罪に限らず、殺人事件などさまざまな事件にインターネットが絡んでおり、日々、府内の警察署に足を運んで捜査支援を行うなど活躍の場は広がっている。
警察庁によると、科学捜査官や国際犯罪捜査官など数は少ないが専門捜査官はほかにもいる。捜査幹部は「民間企業からも欲しがられる人材が、犯罪捜査に貢献するという意識を持って警察組織に入ってきている」と期待を寄せている。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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