東京都に住む女性(52)は、人生のままならなさに打ちのめされてきました。子育てのさなかに経験した離婚。上司の圧力に悩んだ末、職場を離れた過去。「誰かに助けて欲しい」と、恋愛にも溺れました。追い込まれた末に出会ったのは、占い師を名乗る人物です。運勢を見てもらうだけでなく、高額な授業料を支払い、師事した時期も。いわゆる「スピリチュアル」の世界に浸る日々を経て、女性は家族への思いに気付いていきます。彼女のこれまでを振り返ると、自らを超えた存在に頼ろうとする、心の動きが見えてきました。(withnews編集部・神戸郁人)
【漫画】「母は『神』に抱かれた」25年間、カルト2世信者を縛ったもの 他人事じゃない「救い」への思い
【連載「#カミサマに満ちたセカイ」】
心の隙間を満たそうと、「カミサマ」に頼る人たちは少なくありません。インターネットやSNSが発達した現代において、その定義はどう広がっているのでしょうか。カルト、スピリチュアル、アイドル……。「寄る辺なさ」を抱く人々の受け皿として機能する、様々な »宗教 »の姿に迫ります。
「救い」求める心情を知りたい
待ち合わせ場所に赴くと、既に女性の姿がありました。しゃんと背を伸ばした様が、凛(りん)とした雰囲気を醸し出しています。待たせてしまったことを謝ると「とんでもない! 今日はよろしくお願いしますね」と、柔和な笑顔で応じてくれました。
今回取材を申し込んだのは、何者かに救いを求める心情について、深く知りたいと考えたから。女性の体験には、誰しもが抱える可能性がある生きづらさと付き合うための、ヒントがあるのではないか――。そうした思いから、連絡をとりました。
聞けば会社員として働き、この日は休みを取ったといいます。恐縮しつつ、取材場所の喫茶店へと向かいます私とは親子ほどの年齢差がありますが、道すがら交わす言葉は、とても丁寧です。語り口も優しく、自然と緊張がほぐれていきます。
店内に入った後、リラックスした雰囲気の中、私は質問を重ねていきました。
夫と離婚、ワンマン社長の圧力に苦悩
スピリチュアルへの傾倒は、女性が歩んできた道のりと、深くつながっています。
学生時代に出会った男性と、19歳で結ばれました。翌年に長女が生まれ、時を置いて次女と三女も出産。生活費を稼ぐため、飲食店のパートタイマーとして身を粉にしましたが、後に夫の女性問題が明るみに。30歳で結婚生活にピリオドを打ちました。
シングルマザーとなってからは、よりよい収入源を得ようと、企業の営業職に転身。正社員採用でしたが、ノルマが厳しく、過酷な労働環境だったといいます。5年ほど働いたと後、別の会社でカスタマーサービス職に就きました。
自社のウェブサイト経由で連絡してきた人に、商品の内容を伝える業務。分かりやすい説明が評判となり、次第に顧客から指名を受けることが増えました。
やりがいを感じる一方、社内では幹部によるパワハラが常態化し、居づらさも覚えていたと女性は打ち明けます。
「設立から間もない会社だったこともあり、社長の影響力がとても強かったんです。気に入られなければ、側近すら排除される状況でした」
女性自身も、会議で意見を無視されるといった仕打ちを受け、社長と顔を合わせることが怖くなるように。ストレスは高まるばかりでした。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース