気道確保→すぐAED、猛ダッシュした野球部員 命救った連係プレー

神谷裕司

 高校野球の部員や審判員、保護者らが「見事な連係プレー」で、ひとりの男性の命を救った。

 6月18日、佐賀県唐津市の県立唐津西高校のグラウンドで、同校と県立佐賀工業高校の野球部の練習試合が予定されていた。午前8時50分ごろ、試合前のノックを終えた佐賀工野球部長の50代男性がミーティング中、三塁側ベンチ付近で突然、倒れた。

 審判員で南折立病院(福岡市)医事課長の杉山幸也(ゆきや)さん(50)、唐津西野球部副部長の中島重男さん(64)、佐賀工野球部員の保護者で整体師の中島敬史(たかし)さん(49)らが協力し、うつぶせで倒れた男性を仰向けにして気道を確保。中島重男さんが同52分、119番通報した。

 脈をみた杉山さんは「これは危ない」と判断。心肺停止状態だった男性の胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始め、「早くAEDを」と叫んだ。

 唐津西野球部2年の田中哲史(さとし)さん(17)が校舎内の事務室まで約50メートルを猛ダッシュ。すぐAED(自動体外式除細動器)を取って来て杉山さんに渡した。杉山さんは心肺蘇生のためにAEDを使って電気ショックを与え、さらに交代で胸骨圧迫などを続けた。午前9時、救急車が到着し、男性は一命を取り留めた。現在、療養中だという。

 唐津市消防本部の吉田弘志消防長は26日、4人に感謝状を贈呈し、「皆さんの連係がきちんとして、ひとりの命が救われました。本当にありがとうございました」と述べた。

 岩﨑俊・副消防長は「見事な連係のなかでも、田中さんがAEDの場所を知っていたことが一番のファインプレー」と語った。田中さんは1年生のときに学校でAEDの講習を受け、校内2カ所の配置場所を覚えていたという。「講習が役に立ちました。あのときは必死でしたが、おとなの方々に支えられて、人を助けることができてよかった」と笑顔を見せた。

 杉山さんは「どうにか助けたいと思った。AEDをすぐ持って来てくれたのがありがたかった」と話した。(神谷裕司)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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