水俣病の犠牲者慰霊式が19日、熊本県水俣市の「水俣病慰霊の碑」前で営まれた。公式確認から63年経ち、患者認定しないまま被害者救済を図る水俣病被害者救済法(特措法)の施行から10年となった。患者や遺族、原因企業チッソの関係者、小泉進次郎環境相ら計約830人が出席し「悲惨な公害を二度と繰り返さない」と誓った。
水俣病は、チッソ水俣工場が不知火海に流した廃水に含まれたメチル水銀が原因の公害病。1956(昭和31)年5月1日、患者の多発が保健所に届けられ公式確認された。慰霊式は例年同日にあるが、改元と重なり変更された。認定患者2283人のうち、1951人(18日現在)が亡くなり、今年の慰霊式では遺族が希望した4人分が奉納され犠牲者名簿は406人になった。
2009年施行の特措法は「あたう限りの救済」をめざしたが、救済策から漏れるなどした1700人以上が国などに損害賠償を求める訴訟を起こしており、「最終解決」には程遠い。
式では患者・遺族を代表し、長女と夫、父親を水俣病で亡くした認定患者の上野エイ子さん(91)が祈りの言葉を述べた。「水俣病で亡くなった多くの人たちの生命を決して無駄にしないでください……どうか皆さん、水俣病のことを忘れないでください」
小泉環境相は「上野さんの後に、申し上げるべき言葉も見つかりませんが」と切り出し、「水俣病の拡大を防げなかったことを、改めて衷心よりおわび申し上げます」などと述べた。
式後の小泉環境相の記者会見では、患者・被害者団体が求め続けている特措法に基づく不知火海沿岸住民の健康調査への質問が相次いだが、小泉氏は「着実に進めていきたい」と繰り返すにとどめた。(奥正光)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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