昨秋の台風19号による大雨で、福島県本宮(もとみや)市にある築106年の映画劇場が浸水した。SNSで被害が知られると、全国から支援が寄せられ、春先に復活の上映会を企画するまで復旧した。しかし、コロナ禍で延期に。それでも館主は再開の日を信じて劇場を守り続ける。
JR本宮駅から歩いて3分。住宅街の裏路地に木造3階建ての「本宮映画劇場」がある。薄暗いロビーには北大路欣也や小林旭ら銀幕スターや昭和映画のポスターがあり、床のコンクリートがむき出しの劇場内に木製のいすが約100席。「大勢の人に助けてもらった。水害に遭ったフィルムがここまでよくなりましたよ、って見せたい」。ロビーのパイプ椅子に腰掛けた館主の田村修司さん(83)は話す。
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劇場は1914(大正3)年、住民有志が「公民館」として開業したのが始まり。戦時中に田村さんの父が買い取り、戦後は大盛況だった。しかし、家庭にテレビが普及するにつれて客が減り、63年に閉館。幼い頃から映写機の使い方を学び、跡を継いだ田村さんは自動車のセールスマンに転職した。
だが、劇場への愛着を捨てきれなかった。家族から反対されたが、「定年後、もう一度お客さんを迎えたい」と手放さず、映写機の調整やフィルムの手入れ、劇場の掃除を続けてきた。
定年を迎えた頃、映画館は施設内に複数のスクリーンがあるシネマコンプレックスが主流で、デジタル化が進んでいた。「再開しても商売にならない」と悩んだが、映画好きの眼科医から頼まれたのがきっかけで約10年前に無料上映会を開いた。
発光させた炭素棒を光源として…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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