水田の整備が進んでいる地域ほど、農地や水路などの維持・保全を支援する農水省の「多面的機能支払交付金」の活動も盛んになっているという調査結果を、民間研究機関の日本水土総合研究所がまとめた。水田1枚の面積を一定の規模以上にするなどの整備事業は、地域の農家がグループを作って話し合うことになる。その集まりが同交付金の活動の土台にもなる傾向があると分析する。 同交付金は、水路の草刈りや泥上げなどが対象の「農地維持支払い」、水路や農道の補修などが対象の「資源向上支払い」の柱で構成。同研究所は47都道府県の水田面積のうち、1枚30アール以上に整備されている面積の割合、同交付金による活動面積の割合を使い、双方の関連性を調べた。 整備率が9割を超える北海道、福井県は農地維持支払いの面積割合も8割以上だった。一方、整備率が1割未満の東京都、神奈川県は農地維持支払いの割合も1割未満だった。47都道府県の傾向を踏まえ、整備率と農地維持支払いの関係性を試算し、数値化。最も関係が強い場合に1になるところ、0・7となった。 整備率と資源向上支払いの関係も調査。整備率9割以上の北海道や福井県は、資源向上支払いの面積割合も7割に上った。関係性の数値は0・5だった。 同研究所は「水田の整備をきっかけに作った農家グループが、多面的機能支払いの活動の土台にもなる傾向がある」(企画研究部)と分析する。 同交付金のうち、農地維持支払いは農家だけのグループでも活用できるが、資源向上支払いは農家以外の地域住民の参加が必要。同研究所では、水田整備によって生まれたグループが消防団、PTAなど農家以外の地域住民も巻き込んで活動しているとみる。
「多面的交付金」愛称は「農地・水」? “先祖返り”で選考休止
農水省は、農道などの保全管理活動を支援する「多面的機能支払交付金」の愛称の選考を休止した。1000通程度の応募が集まった一方、「農地・水」といった以前の制度名を踏まえた応募が大半を占めたのが理由。制度が一定に定着していることが明らかになった格好だが、過去の名称なだけに、最終的にどのような愛称にするか、頭を悩ませている。 同制度は「農地・水保全管理支払交付金」を改称して2014年度に創設。生物多様性など、農作物の生産だけにとどまらない農地が果たす機能を維持、拡大することを目的に「多面的機能」と名付けた。農地ののり面の草刈りや農道の軽微な補修などに対し、面積に応じて交付金を支払う。「内容が固い」といった指摘があり、農家以外の地域住民を含めより多くの人に知ってもらえるよう、昨年愛称を募集していた。 同省によると、1000通程度の応募のうち「のうち・みず」「農地・水」など、スタート当初の制度名を踏まえたものが大半を占めた。この結果を受け選考を休止した。 同省は「制度名が浸透しているのは大変うれしいが、過去の制度名を愛称にするのはいかがなものか。今後の対応を検討する」(農地資源課)としている。
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