「かつての芦屋の浜には、高層アパートがモノリスの群れのようにのっぺりと建(た)ち並んでいる」
芦屋育ちの村上春樹のエッセーには、故郷の風景を様変わりさせた巨大建築物への複雑なまなざしがにじむ。それでも、黒い鉄骨の間を浜風が吹き抜けるモダンなデザインは、完成から42年が経った今なお人々を引きつけてやまない。
兵庫県芦屋市の大阪湾沿い、約125ヘクタールの埋め立て地に広がる芦屋浜シーサイドタウン。その中央部に1979年、14~29階建て全52棟の「芦屋浜高層住宅」は誕生した。分譲と賃貸で計3381戸、兵庫県や県住宅供給公社など4事業主が分割して管理運営を担った。
外観の特徴はなんと言っても、5階ごとにある共用階と、縦に伸びる階段室からなる格子状の鉄骨構造だ。旧建設省が進めていた住宅生産の工業化プロジェクトの一環で、あらかじめ組み立てた住戸を鉄骨にはめ込む画期的なプレハブ工法が採用された。完成後まもないころ、建築学生として調査に訪れた同公社の澤瀬哲雄課長(64)は「近未来の建物やった」と当時の印象を振り返る。
当時最先端のごみパイプライン
澤瀬さんらの案内で、建物内…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル