大野正美
北方領土問題の啓発などに当たる北方領土問題対策協会(北対協、東京都台東区)が、全国に残る北方四島関連の資料の寄贈を呼びかけている。元島民の平均年齢は昨年3月末で86歳に達し、高齢化が進む。当時の生活を伝える品など、北方四島が日本の領土であることの「証し」となる資料を幅広く集め、後世に継承することが目的だ。
北対協は昨年10月20日、北方四島に関する資料受け付けの事務局を開設。業務を委託した文化・国際事業などの企画・運営会社「オスカー・ジャパン」(東京都三鷹市)を通じ、資料の寄贈や情報提供などの呼びかけを始めた。
対象となるのは戦前・戦中から戦後のソ連軍の占領下の北方領土での暮らしや、島からの引き揚げ時の状況とその後の暮らしが分かるもの。また、北方領土返還運動や、江戸・明治期以降の歴史・文化などに関係するものも求めている。資料は写真や地図、当時の新聞、手記、生活用品といった様々なものを幅広く受け付けている。
こうした資料の収集は、これまで元島民でつくる「千島歯舞諸島居住者連盟」や、根室市など元島民らが多く住む北方領土近隣の自治体が主に担ってきた。しかし、最近は元島民の高齢化に伴う住居の移転や遺産相続などで、資料が散逸したり、なくなったりする懸念も強まっていた。
北海道内には札幌市のように、北方領土から離れていても元島民やその家族らが多数住み、返還運動も盛んな場所がある。また、全国を見ても富山県黒部市のように、明治期から多数の住民が北方領土に移住して歴史的つながりが強く、元島民らが多く住む場所もある。こうした地域も含めて、北対協では今回、全国規模での幅広い収集を目指すことにした。集まった資料は北対協が保管する。
12月1日の「北方領土返還運動開始の日」に合わせて、昨年12月には根室市などが東京・新宿駅の西口地下広場で、北方領土に関するパネル展を実施した。会場では歯舞群島・多楽島出身の福沢英雄さん(81)が根室市北方領土史料館に寄贈した、島からの脱出時に50個のおにぎりを詰めた「おひつ」などの日用品も展示した。
福沢さんは国の領土・主権展示館(東京都千代田区)にも島の生活道具などを寄贈しているが、「北対協の募集にもさっそく応じ、手もとに残る郵便物や写真、土地の謄本といった書類文書などを提供することにした」と話す。
資料の提供は現物の寄贈を原則としているが、難しい場合は複製の作成なども検討するという。寄贈の申し出や問い合わせは、オスカー・ジャパン国際事業部へ電話(0120・160・175)かメール(hoppou-shiryou@oscar-japan.com
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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