江戸時代から鹿児島市の山間部で毎年続く伝統行事「錫山(すずやま)相撲」が今年、新型コロナウイルスで中止を決めた。地元住民によると300年以上続く歴史で初めて。太平洋戦争中も途切れなかっただけに、断腸の思いでの決断だった。
市中心部から南西に約20キロ離れた錫山地区。江戸時代初期の1655年に国内有数のスズ鉱脈が発見された地区で、労働者らの安全祈願や力試しのために神社に奉納したのが錫山相撲の起源とされる。
かつては九州を代表する「筑紫の三土俵」の一つと言われ、鉱山が廃れた後も伝統は引き継がれてきた。角界で活躍した力士も参加し、1962年には当時の横綱・柏戸が土俵入り。鹿児島出身の人気力士、元大関若嶋津(現二所ノ関親方)も高校時代に出場したという。
過疎化や人口減などで大会の規模は年々小さくなってきたが、地域住民を中心に伝統を維持してきた。市内の高校相撲部や地元小中学生の対抗戦のほか、幅広い層が楽しめるように赤ちゃん土俵入りなど工夫も重ねた。最近も県内外から500人ほどの相撲ファンが訪れ、363回目となる今年は3日に予定されていた。
だが新型コロナは収まらず、7月には市内の飲食店でクラスターが発生。住民同士で会議を重ね、感染拡大防止のために中止せざるを得ないと結論づけた。
「心にぽっかり穴が開いた。一…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル