長男の戸塚健大(たかひろ)君=当時(6)=を失った母の正子さんは、先月28日に川崎市多摩区でスクールバスを待つ児童らが殺傷された事件のニュースに、「18年前のあの日がよみがえった」と話す。
日差しが日に日に強くなり、暑さの中に湿気が感じられ始めるこの季節。毎年6月8日が近づくと、どこにいて何をしていてもあのころが思い出され、正子さんは「息もできないほど苦しくなる」。
あの日、学校に行く健大君の後ろ姿に「いってらっしゃい」と声をかけたのが最後だった。顔をしっかり見なかったことを、「今も後悔している」という。
「魂の抜け殻のようになり、乾いた世界の中でただ、時間だけが過ぎた。来る日も来る日も枯れることのない涙を流すしかなかった」
そんな自分と、川崎の事件で被害に遭った人々の家族が重なる。「ご家族のことを思うと、苦しくて胸が張り裂けそうです」
健大君の告別式で、参列してくれた子供たちに贈ったのは、「誰もが安心して暮らせる、安全な社会をつくってください」という願いだった。18年たってもまだ、そんな社会は実現できていない。川崎の事件は、その現実を改めて突きつけた。
池田小事件を機に、学校の安全対策は確かに進んだ。しかし、「犯罪者を生み出さない社会を実現するため、私たちに何ができるのか」という「健大から託された宿題」の答えが、いまだに見つからないのがつらい。だからこそ、事件を「過去の出来事」としてはいけないと改めて思う。
「子供も大人も幸せに暮らせる、本当に安全で安心な令和の時代になってほしい」
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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