高齢ドライバーによる事故が相次ぐ中、大分県内では運転免許の自主返納者が4月下旬以降、増加傾向にある。県警によると返納者のほとんどが65歳以上の高齢者。同月19日に東京・池袋で男性(87)の運転する車が暴走し歩行者ら10人が死傷した事故を受け、返納を決意する人が増えたとみられる。
県警運転免許課によると、事故発生までの4月の自主返納者数は週平均で95件だったが、22~26日は178件に急増。5月も第2週143件、第3週128件、第4週137件、第5週123件と高い水準で推移した。5月の返納総数は、昨年同月と比べて147件増で約1・4倍となった。
今月4日には、福岡市早良区で車が逆走したまま猛スピードで交差点に突っ込み、運転していた81歳の男性と妻(76)が死亡する事故も起きた。男性は事故直前、周囲に免許返納を相談していたという。
大分市内の女性(78)は今月中旬、免許を返納した。「年を重ねると勘が鈍くなる。これからは夫の車の助手席に乗って、2人で気をつけて運転したい」
返納後の移動手段を確保しようと、自治体やタクシー協会などは70歳以上の自主返納者に対する支援制度を整えている。内容は自治体ごとに異なるが、主に1万円分のタクシーチケットやバス回数券を交付するものが多い。
同課は「返納は家族などとよく話し合って決めてほしい。運転免許センターや各署でも相談を受け付けている」と話す。運転免許センター=097(528)3000。
遺族のメッセージ発送
県警は、高齢者に運転技術を見直したり免許返納を考えたりするきっかけにしてもらおうと、4月の東京・池袋暴走事故で妻子を亡くした男性のメッセージを同封した「まごころ宅配便」の発送を始めた。来年3月までに、半年後に免許更新を迎える80歳以上の免許保有者に送る予定。
メッセージは、男性が交通安全活動に活用してほしいと警察庁に寄せた。「少しでも運転に不安がある人は車を運転しないという選択肢を考えてほしい。周囲も本人に働きかけて」などと訴え、悲惨な事故による被害者を減らすことができれば「妻と娘も少しは浮かばれるのではないか」と結んでいる。
県警交通部の幸野俊行参事官は「メッセージを受け取った人には自分の運転技術を見直してもらい、不安があれば免許返納を考えて。生活に車が欠かせない場合は必要最低限の距離だけ運転するようにしてほしい」と呼び掛けた。
まごころ宅配便は2017年に開始。免許返納制度や運転時の注意事項などを紹介する資料を送付する。メッセージ入りの初回便102通は10日、県庁で県警の担当者から大分中央郵便局員に手渡しされた。
西日本新聞社
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