2019年の参院選広島選挙区で河井克行元法相と妻案里氏=ともに有罪確定=から現金を受け取った100人のうち地元議員ら34人について、東京、広島両地検は14日、公職選挙法違反(被買収)の罪で起訴したと発表した。河井夫妻の巨額選挙買収事件の捜査は、これで終結となる。
地検は昨年7月、案里氏を当選させるため夫妻から現金を受け取ったとする100人全員を不起訴とした。だが、検察審査会は1月、議員辞職の有無や受領額などで線引きして35人を「起訴相当」などとする議決結果を公表。これを受けて再捜査を進めていた。
東京地検の森本宏・次席検事はこの日の臨時会見で、処分を一転させた理由を「国民から選出される検審の判断も理解できる。議決内容を踏まえて再検討し判断した」と説明しつつ、「(今後の)処分基準にはならない」と述べた。
34人のうち25人は略式起訴とした。当時の肩書は首長1人、広島県議9人、市議10人、元国会議員秘書1人、選挙スタッフ4人。受領額が10万~300万円だったことをふまえ、求刑する罰金額(50万円以下)に差をつけたという。
略式起訴は、書面審理で罰金などを求める手続き。簡裁の略式命令が確定すれば、公民権が原則5年間停止される。
ほかに容疑を否認するなどした計9人(県議2人、市町議7人)は正式起訴とした。今後、広島地裁で刑事裁判が公開で行われる。
残りの1人は体調面から再び不起訴とし、「不起訴不当」とされた46人も不起訴処分を維持した。
東京第六検察審査会は1月公表の議決で、検察の不起訴判断を「金の受領が重大な違法であることを見失わせる」と批判していた。
河井氏は100人に計約2871万円を配った加重買収などの罪で、案里氏も県議4人に計160万円を渡した買収罪で、いずれも有罪判決が確定している。
舞台となった参院選では、自民党本部から河井夫妻側に計1億5千万円が選挙資金として提供された。税金も含まれるこの巨額資金が、買収に使われたのではないか――。そんな疑念は依然として解明されないままだ。
河井夫妻が起訴された20年7月、当時の安倍晋三首相は「説明責任を果たさなければならない」と明言したものの、党本部は「買収資金の原資ではない」と否定だけして、詳しい説明はしていない。
克行氏は自身の裁判で「手持ち資金」を使ったとし、1億5千万円は「機関紙の配布や人件費などに使った」と語った。判決は、1億5千万円が買収に使われたかどうかは言及しなかった。
昨秋の総裁選前には「買収に使われていないことを書面をもって、しっかりと国民に説明する」と語っていた岸田文雄首相は、総裁選後の昨年10月、党本部で監査が終わっていることなどを理由に再調査に否定的な考えを表明している。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル