安倍政権に近いとされる黒川弘務東京高検検事長の定年を延長した閣議決定を巡り、国会が揺れている。定年延長の背景に何があるのか。自民党の河井案里氏(参院広島)と夫の克行前法相(広島3区)の秘書が起訴された公選法違反事件の捜査に影響はあるのか。元検事で広島地検特別刑事部長、東京地検特捜部検事などを務めた郷原信郎弁護士(島根県松江市出身)に聞いた。
―黒川氏の63歳定年が1週間後に迫る中、政府は勤務を半年延ばす閣議決定をしました。どう見ますか。
違法だ。検察官は個々に大きな権限を与えられているから、他の公務員とは別に特別法の検察庁法で年齢制限が設けられている。一般法の国家公務員法の規定は適用できない。
―政府は「検察官に国家公務員法を適用外とする解釈を変更した」と説明しています。黒川氏は余人をもって代えがたい存在でしょうか。
閣議決定後、後付けで解釈変更したのだろう。非常に苦しい説明だ。首相官邸に指示され、法務省の官僚らが理屈を考えたのではないか。安倍1強の弊害だ。
黒川氏は私と検察官の任官同期。彼は法務官僚としての経験がほとんどで、官邸と今まで近かったことは間違いない。続投で特定の事件で何かをさせたいという意味ではないと思う。
―では官邸の狙いは何でしょうか。
黒川氏の次期検事総長への起用と推測される。検事総長を思うがままにコントロールできる人にしたいのが目的の一つと思う。そうなれば検察は安倍政権に強い影響力を及ぼされる存在になってしまう。
―この問題は、昨夏の参院選広島選挙区を巡る河井陣営の買収疑惑の捜査に影響しますか。
現在の稲田伸夫検事総長は63歳。就任から2年になる今年7月ごろに退任するとみられ、それまでに捜査は終わるはず。広島地検にかなりの応援が入っているとすれば、その態勢が何カ月も続くと思えない。あまり関係ないだろう。
―事件は、検察に向けられる視線が厳しくなる中での捜査になります。
だからこそ検察は力を入れていると思う。広島地検は案里氏の秘書が連座制の対象者に当たると判断しており、案里氏の失職は免れないだろう。焦点は克行氏に捜査が及ぶかだ。自民党本部が河井夫妻に提供した1億5千万円がどう使われたかまで解明できる可能性がある。
―河井夫妻は「捜査に支障を来す」と、事件に関する説明を避けています。
しゃべればしゃべるだけ説明できなくて追い込まれるから、捜査を言い訳にして、しゃべらないで済ませているというだけだろう。
<東京高検検事長の定年延長問題> 政府は1月31日の閣議で、2月7日に定年を迎える予定だった黒川弘務検事長の勤務を8月7日まで半年間延長すると決定した。検察庁法は検察官の定年を検事総長は65歳、それ以外は63歳とする。国家公務員法は退職で公務運営に著しい支障が生ずると認められる場合、定年を延長できると定めており、政府はこの規定を適用したと説明した。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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