パワハラやセクハラ、嫌がらせ。あなたを害する者やことをよけ、良い縁を結ぶ――そんなお守りが、トロッコ電車で有名な黒部峡谷(富山県黒部市)にある宇奈月温泉で生まれた。その名も「権利ノ濫用(らんよう)除お守り」。モチーフになったのは、法律を学んだ多くの人が知るという、この温泉で起こった歴史的な事件だ。
1923年に開湯した宇奈月温泉は、黒部川上流の黒薙温泉から引湯管(木管)で湯を引いていたが、木管がかすめる約2坪の土地について、利用の承諾を得ていなかったという。
このことを知った人物がその土地を購入し、温泉を運営する黒部鉄道(現在の富山地方鉄道)に対し、木管を撤去するか、隣接する土地を含めて高額で買い取るよう要求した。
同社がこれを断ると、木管の撤去と立ち入り禁止を求める訴えを起こした。しかし、最高裁の前身である大審院は35年、双方の利益を比べ、土地所有者が権利を行使する目的を踏まえて「権利の濫用」として訴えを退けた。
これが、いわゆる「宇奈月温泉木管事件」だ。
事件とお守りの関係を監修し…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル