洞穴にこもる伝統行事、存続危機「息子一人になっても」

 宮城県東松島市の宮戸島で200年以上続く「えんずのわり」という、豊作や無病息災を祈る行事がある。子どもたちが1月14日の小正月の夜に各戸を回り、害鳥を追い払う唱え事をする。国の重要無形民俗文化財にもなっているその伝統が、存続の危機にさらされている。

 島の南の「月浜(つきはま)」という半農半漁の集落にある神社の前で昨年12月中旬、中学1年の山内紳太郎君と小学6年の小野佑真君が朝から鉈(なた)で竹を割り続けていた。えんずのわりの準備だ。

 当日に備え、身を清めて「神の化身」となるため、神社の参道脇にある岩の洞穴に、この11日からこもる。かまどで飯を炊き、囲炉裏でみそ汁を作って6日間、共同生活をする。竹は薪をくべるのに使う。今回が7年目になる山内君は2年前、鍋に手を触れてやけどしたこともあったが、「毎晩、佑真と話ができる」と楽しみだ。

 担い手は、小学1年から中学3年までの男子と決まっている。29世帯83人が暮らす月浜には山内君と小野君の2人しかいない。かつては岩屋に人が入りきらないため、各家から1人、年齢も「元服」前の小3から中1までと限った時代もあったが、子どもが徐々に減って対象者を広げた。

 「昔は子どもたちだけで山に入って杉の木をノコギリで切って運んできた。子どもが自立する場でもあり、家にテレビもない時代だったから楽しかった。一番上の『大将』役が指示し、15人ぐらいで作業を分担していたけど2人じゃ大変さ」。先祖が神社の宮司だったとされ、集落で「神の家」と呼ばれる民宿経営の小野勝見さん(70)は言う。

 震災で津波に襲われた集落は、…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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