原発事故の刑事責任が問われた東京電力の旧経営陣の裁判で、東京高裁は「当時の知見」を根拠に、検察官役の主張をことごとく退けた。犯罪の成立の可否を判断の前提にした刑事裁判と民事裁判の立証ハードルの違いも改めて浮き彫りになった。
検察が2回不起訴とした判断を検察審査会が覆した事件で、刑事責任を立証する難しさはかねて指摘されてきたが、一審・東京地裁判決は、検察官役の指定弁護士の主張に十分応えていないと批判された。高裁は一審の論理展開を踏襲しつつ、批判に答えるかのように、一審が触れなかった点に言及していった。
指定弁護士が特に問題視したのは、一審が、事故の回避措置としては「原発停止しかなかった」と断定した点だった。指定弁護士は、防潮堤建設や建屋の浸水対策などでも事故は防げたと主張し、原発停止より実施しやすい対策さえとらなかったことを前提にすれば、刑事責任が認められると訴えていた。
だが高裁判決は、これらは事…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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