防波堤近くの湿地で眠っていた種が掘り返され、紫色の花を咲かせたミズアオイ。福島では数十年ぶりに確認されたというスナビキソウ――。東京都多摩市のアーティスト、倉科光子さん(60)は、東日本大震災の津波の後に姿を現した植物を描き続けている。「tsunami plants(ツナミ・プランツ)」と倉科さんが呼ぶ植物は、被災地の片隅で、静かに、力強く命をつないでいる。
震災から2年後の2013年6月。倉科さんは、岩手県久慈市の海岸近くで開かれた植物観察に参加した。そこで目にとまったのが一株のシロヨモギ。津波の後に残った根から育った葉や花は立ち枯れていたが、根元から再び若い芽が出ていた。
このシロヨモギが、倉科さんが被災地で初めて描いた植物になった。タイトルは、「40°12′32″N 141°47′54″E」。シロヨモギがあった場所の緯度経度からつけた。緯度経度が分かれば、誰でも見に行くことができる。植物学者が場所を緯度経度で教えてくれることから着想を得た。
今年初めて開いた個展にあわ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル