「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が再開に向けて動き出した直後の26日、文化庁が補助金の全額不交付を決定した。実行委員会会長の大村秀章・愛知県知事は国と法廷闘争に入ることを表明。作品を出展する作家らも、一斉に批判の声をあげた。
芸術祭の津田大介芸術監督は朝日新聞の取材に、文化庁の補助金交付決定は通常1年以上前で、決定時点で作品内容などは決まっていないことが多いと反論。「事後的に交付決定を覆されたら、企画内容に強烈な自粛効果が生まれる。事後検閲的な効果が強いという点でも、手続き論的にも問題の多い決定」とコメントした。
参加作家で、企画展中止に抗議して展示を変更した田中功起さん(43)は「検閲は通常事前に行われる。日本では自主規制という体裁でソフトに行われてきた。これは新しい検閲のあり方だ」と批判した。企画展に出展していた白川昌生さん(71)は「ある種の文化統制だ」。表現の自由の問題が分岐点にあると感じ、「乗り切れるのか、それとも自由を放棄するのかの瀬戸際だ。政治的なにおいに危機感を覚える」。全作品の展示再開を目指す「ReFreedom_Aichi」プロジェクトに参加するユニット「キュンチョメ」のホンマエリさん(31)も「全ての表現活動を脅かす、最低の判断」と憤る。同プロジェクトは26日夜、インターネットの署名サイト「Change.org」で文化庁の決定撤回を求める署名を始めた。
日本ペンクラブは、文化庁の決定が「(企画展を)脅迫等によって中断に追い込んだ卑劣な行為を追認することになりかねず、行政が不断に担うべき公共性の確保・育成の役割とは明らかに逆行するもの」との吉岡忍会長談話を出した。(江向彩也夏、興野優平)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル