東京都大田区の住宅街に「昭和のくらし博物館」という小さな博物館がある。建物は1951(昭和26)年に建てられた2階建ての木造住宅で、もともとは、家具や道具、建築を中心に生活史を研究してきた館長・小泉和子さん(86)の実家だった。中の家財道具も保存して丸ごと公開、日本人のくらしを考える場になっている。その敷地内には、もう一棟、99年の開館から16年後に誕生した「画家吉井忠の部屋」という別館が立つ。一般的な知名度が高いとは言えないが、小泉さんは、今こそ評価されるべき芸術家だと言う。40年以上親交を結んだ洋画家とその作品について聞いた。
吉井忠(1908~1999年)は昭和から平成にかけて活躍した洋画家で、骨太で知的な構成と落ち着いた色づかいが特徴です。55年、私が女子美術大学2年の時に友人に誘われてアトリエを訪ねて以来、亡くなるまで40年以上、家族ぐるみで親しいつきあいがありました。とても真面目な方で、あまり自分から前に出るタイプではありませんでした。飲み会などにいらっしゃっても、気がつくとスッとお帰りになっている。
大変な博識で文章家。社会に対する関心が薄い芸術家をよしとする日本の風潮の中、社会的な発言をし、画家としても時代に向き合って制作してきました。そんな画家の全体像を知ってほしくて、部屋では油絵を中心に、水彩、デッサンのほか、著書や原稿も展示しています。
この「巴里(パリ)1937年…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル