日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告(67)が巨額の役員報酬を隠したとされる事件をめぐり、金融商品取引法違反罪の共犯に問われた元代表取締役グレッグ・ケリー被告(65)に一部無罪の有罪を言い渡した東京地裁判決の要旨は次の通り。
罪となるべき事実
ゴーン元会長と大沼敏明・元秘書室長は2010~17年度、元会長の報酬が計約170億円だったのに、有価証券報告書(有報)では各年度に支払った計約79億円を記載し、虚偽の記載がある有報を提出した。ケリー元役員は10~16年度は共謀がなく無罪。17年度のみ元会長と大沼氏と共謀した。
裁判の争点と証拠構造
争点はまず、元会長の報酬の中に有報で開示すべき「未払い報酬」が存在するかどうかだ。次に、虚偽記載罪が成立するかなどを検討した上で、ケリー元役員が未払い報酬を認識していたか、元会長や大沼氏と共謀したかが重要な争点となる。本件は多数の客観資料があるが、大沼氏の供述も重要な証拠だ。
司法取引した大沼氏とハリ・ナダ専務執行役員の供述の信用性
大沼氏とナダ氏は18年10~11月、検察官と司法取引し、資料提出や証言を約束する代わりに虚偽記載の罪などで起訴されないことで合意した。そのため有利な扱いを受けたいとの思いで検察官の意向に沿う供述をする危険があり、元会長やケリー元役員に責任転嫁する危険性をはらむ。2人の供述の信用性は、客観証拠や信用できる第三者の供述による裏付けがあるかなどを慎重に検討すべきだ。
合意文書に対するケリー元役員の認識
大沼氏は11年4月、元会長…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル