漫画やアニメなどを不正に複製し、無料で公開する「海賊版サイト」の被害が「過去最悪」の状況になっていることが、出版社などでつくる対策団体の調査でわかった。その背景を調べていくと、ある特定の国でサイトの運営にかかわるやりとりがなされている実態が浮かんだ。何が起きているのか。調査を手がけた男性が取材に応じた。
男性は「Cheena(チーナ)」という通称で活動する23歳のホワイトハッカーだ。専門的に手がけているのは、インターネットのセキュリティーや海賊版対策の調査。これまでに大手出版社やIT企業の依頼を受け、数々の調査を請け負ってきた。
チーナは2017年8月、日本最大の海賊版サイト「漫画村」の運営者をいち早く特定し、ブログに公表したことで知られる。
出版業界や、捜査に着手しようとしていた警察はブログに色めき立った。数カ月後に栃木県警の捜査員がチーナに情報提供を求め、運営者の逮捕につながる手がかりの一つとなった。その時の謝礼は3千円だった。
ネット上に点在する情報の断片を丹念に集め、漫画村の運営実態に迫った実績は、その後の活動にもつながっている。
ベトナム系、「巣ごもり」で急増するアクセス
記者が取材を依頼したところ、チーナは一通のリポートを作った。表題は「2021年の漫画海賊版とベトナム系運営のサイトの台頭」だった。
「ベトナム系」とはどういう意味なのか。
チーナはレストランで出されたホームメイドパイをほおばりながら、調査結果の説明を始めた。
海賊版サイトを取り巻くシステムが主にベトナム国内に存在し、役割分担と分業が徹底されている、といった内容だった。
チーナによれば、日本の出版…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル