愛知県岩倉市議が市消防本部内のハラスメントの有無をオンラインアンケートで試みた。案内チラシは消防職員56人のうち28人にしか渡せなかった。だが回答は――。ハラスメントが「ある」は26件、「ない」は112件、市議への誹謗(ひぼう)中傷は67件。職員数をはるかに上回った。いったい何が起きたのか。
無会派の塚崎海緒(みお)市議=1期=が調査し、昨年の12月議会で報告した。
塚崎氏のもとには以前より、複数の職員から、消防署内のパワハラやセクハラについて匿名アンケートや第三者機関による調査を求める声が寄せられていた。
市側の動きが鈍く、職員が救われないと考えた塚崎氏は、昨秋に実施された同県津島市の第三者委員会によるハラスメント調査を参考に、独自の匿名オンラインアンケートに着手した。記入欄へのアクセス方法を案内するチラシを署内に掲示するよう求めたが、かなわなかった。
そこで昨年11月18~21日、職員の出退勤時間に署の前に立ち、手渡すことに。渡せたのは全職員の半数にあたる28枚だった。塚崎氏は、回答数には期待せず、具体的なハラスメント行為が記述されるのかに着目した。
職員数の4倍近い205件の回答、そのうち67件は誹謗中傷
ところが昨年12月3日までに届いた回答は、職員数の4倍近い計205件。
このうち、具体的なハラスメント行為が書かれていたのは、「見た、聞いた」も含めて26件あった。塚崎氏は「文章の特徴からみて同一人物が何度も送ったものではないと推認できる」と話す。
一方、「ない」は112件。ウソの出来事や「署内で大笑い」と調査をからかうような書き込みをしたり、ハラスメントをした人を記す欄に、塚崎氏を表す「本人」と書いたりした誹謗中傷も67件に上った。1時間以上にわたり数秒間隔でこうした回答を送りつける行動もみられた。
塚崎氏は「調査の信憑(しんぴょう)性を損なわせる目的の妨害行為だ」とみている。
市消防長「ハラスメント事案あれば対応していく」
市消防本部を巡っては、昨年11月末、女性消防士2人へのセクハラ行為があったとして、市が消防士長の男性を減給3カ月の懲戒処分とした。塚崎氏も相談を受けていたが、今回のアンケートに記されたハラスメント行為はこれにとどまらなかったという。塚崎氏は「苦しむ中で頑張って声を上げてくれた署員がいる。何とか解決に導きたい」とし、調査結果を総務省消防庁へ報告することも検討している。
岡本康弘・市消防長は「アンケートを妨害する職員がいるほどモラルのない組織ではない。何らかの方法でチラシを手に入れた者の荒らし行為だろう」とし、「セクハラ行為の処分後、全職員との個別面談をしている。ハラスメント事案があれば対応していく」と話している。(嶋田圭一郎)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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