涙が止まらなかった救命処置 珠洲の消防士が振り返る「苦渋の決断」

 能登半島地震から1カ月が経った2月1日、消防士の真脇(まわき)龍さん(30)は倒壊した家屋の前で一人、静かに手を合わせた。救命活動にあたったが、助けられなかった住民の家だった。

 石川県珠洲市で生まれ育った。「地元の人を助けたい」と、18歳で消防士になった。3年前に救急救命士の資格も取得した。

 2016年に同級生の妻と結婚し、長男(7)、長女(5)、次男(4)と3人の子宝に恵まれた。2023年に、海岸沿いに建てたばかりの家に住んでいた。

 1月1日は珠洲消防署に出勤していた。

 午後4時すぎ。訓練棟近くで車両を出そうとしていたところ、強い揺れに襲われその場にしゃがみ込んだ。足元のアスファルトが割れ、隆起するのが見えた。

 自宅には妻と子どもたちがいた。揺れが続く中、とっさに妻に電話した。

 「逃げろ!」

 一言だけ伝え、すぐに切った。

 「海の色が変だな」。同僚の言葉で、高台にある署から海に目を向けると、普段の深い青色の水面が白く見えた。

 庁舎へ戻ると電話がひっきりなしに鳴っていた。「家族が倒壊建物の下敷きになっている」。住民からの救助要請を受け、救急車で急行した。

出動した真脇さんは、翌朝まで休みなく救助や消火活動にあたります。その壮絶な1日で見たものとは。地震から1カ月経ち、葛藤する思いも語ってくれました。

消防士はどんな状況でも「助けたい」

 到着した住宅は1階が押しつぶされ、男性が下敷きになっていた。工具を使い、男性をがれきから救い出したが、心肺停止の状態だった。

 男性に薬剤を投与すると脈が…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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