漁師だった父 「天国への船出」は息子らの名前の大漁旗とともに

 雪もなく、天気も良い、穏やかな正月だった。石川県珠洲市三崎町粟津の漁師、前田進さん(74)の家に、妻のしげ子さん(71)、長男の洋一さん(44)、次男の孝さん(37)とその妻の麻衣さん(34)の5人がそろった。

 食卓にはブリやタコが並んだ。水産物の仲卸をしている洋一さんが用意してきたごちそうだ。

 午後4時前、進さんは近くの幼なじみの呑田喜三代さん(75)に誘われ、家を訪ねていった。

 まもなくして、激しい揺れに襲われた。

 外に出た洋一さんらは、呑田さんの家ががれきの山になっているのを見た。進さんが中にいるはずだ。

 「父ちゃん、父ちゃん」

 兄弟で何度も叫んだが、返事はない。

 ほどなくして大津波警報の放送が大音量で流れ始めた。高台へ走る人もいて、パニックになった。

 「ごめん。後で必ず助けに来…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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