後藤遼太
漁船のエンジンなどを買い替える費用を国が助成する事業について、会計検査院が調べたところ、2016~18年度に助成を受けた約1千の漁業者のうち、半数以上で提出書類に不備があり、助成金の効果を国が把握できない状態だったことが分かった。手続きが不適切だった助成金は3年間で約20億円に上っていた。
水産庁によると、エンジンの買い替えは数百万~1千万円以上かかることもあり、買い替えのタイミングで廃業する漁師も出るなど、人手不足に悩む水産業界で問題となっていた。
このため同庁は、高出力や省エネ性能の優れたエンジンなどを購入する漁業者に2千万円を限度に購入額の半額を助成する事業を2016年度に開始。助成要件として、漁業者が「5年以内に所得10%増」をめざす計画を作成して提出したうえで、毎年どれだけ所得が上がったか、業績を報告することとした。
ずさんな業績報告
検査院が16~18年度に助成を受けた約1千の漁業者を調べたところ、約500の漁業者で所得の算出方法が不適切だったことが判明。民宿経営や遊漁船業の収入といった、漁労収入でないものまで計上して業績が上がったように見せたり、所得を証明する税務申告書が提出されていなかったりした例などがあった。
調査結果について、関係者は「業績を把握しないと効果的な改善指導ができず、漁業者の競争力強化という本来の目的にそぐわない」と指摘する。一方、この事業を受託している漁業経営安定化推進協会の担当者は、「所得の算出基準をしっかり伝えるようにした」としつつ、「税務申告並みにきっちり計算するとなると、漁師や漁協の負担がかなり大きくなり、酷な面もある」と話している。(後藤遼太)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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