山本孝興、吉沢英将
近年の自然災害は、気候変動に伴って激甚化と広域化が進む。ただ、国には事前防災や発生対応、復興まで一元管理する組織がない。対応の最前線に立つ自治体や被災者からは、知見不足や復旧のスピード感のなさに不満の声が上がる。
2年前の台風19号で、千曲川の堤防が決壊した長野市長沼地区。氾濫(はんらん)した水は濁流となり、住宅を押し流した。水が引いても大量の土砂やがれきが残った。
「復旧に不安を抱えた多くの住民が街を離れた。コミュニティーはボロボロになった」。住民自治協議会長だった柳見沢宏さん(69)はこう話す。自宅は全壊判定を受け、小学校の体育館などで避難生活を送った。いまは修理を終えた自宅に戻り暮らしている。
被災後、長野市の災害公営住宅政策は混乱した。
昨年3月の住民アンケートで、長沼地区での建設要望が複数あり、当初、市は前向きだった。その後、浸水想定区域の区内での建設には2・5メートルの盛り土が必要になった。戸建てにするのか。そもそも建てていいのか。時間がかかるうちに住民は移住し、希望者は減っていった。
市は被災から2年となる今月6日、長沼地区での建設を断念すると表明した。住民と行政の橋渡し役だった柳見沢さんは「行政は復興に時間をかけ過ぎた」と振り返る。
建設が決まった隣接の豊野地区でも住民が離れていった。当初、建設戸数を超える110世帯の希望者がいたが、今年7月の本申込時には68世帯に減っていた。「災害公営住宅の経験がなく、判断に時間がかかった。ここまで希望者が減るとは思わず、住民の心の動きを読めなかった」。市の担当者はこう述べた。
自治体が運営する災害公営住…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル