熊本県南部が記録的な豪雨に見舞われたあの日、濁流にのまれ、逃げ遅れた住民の救助に奔走した人たちがいた。球磨(くま)川の急流を下る観光の目玉、ラフティングのガイドたち。その知識と技術を生かし、多くの命を救った。休止に追い込まれた事業の再生に向けた歩みも進めている。
「身動きとれない。よろしく頼む!」
7月4日午前7時19分。球磨川でラフティングツアーを運営する「メインストリーム」の山口真司さん(36)は、緊迫したLINEメッセージを受け取った。拠点がある球磨村渡(わたり)地区にいる社長からだった。
山口さんは約7キロ上流の人吉市の自宅にいた。ただならぬ状況を察し駆けつけようとしたが、村に向かう道路は寸断されていた。同僚の小松昭夫さん(54)と球磨川沿いの市中心部へ車を走らせた。
スナックや飲食店が軒を連ねる繁華街には、すでに茶色い水が渦を巻いていた。2階からタオルを振って助けを求める人。屋根の上に座り込んでいる人。同業者が運んできた別々のゴムボートに乗り込み、2人は濁流にこぎ出した。
ガイドとして培った経験と操船技術を駆使し、流れを読み、パドルで水をかいて救助を待つ建物に横付けする。近づけない時は飛び込み、ライフジャケットを渡して船まで誘導した。泳いでいた小松さんが切れた電線に近づくと、ピリピリとしびれる感覚があった。
山口さんは、電柱にしがみついて流れに耐える高齢の女性を見つけた。
「もう大丈夫」と声をかけ、ボ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル