全国有数の生産量を誇る兵庫県のノリ養殖で、黒く色づかない色落ち現象が深刻化している。海中の窒素やリンなど栄養塩の減少が一因で、売り上げが例年の半分に落ち込む漁業者もいる。高度経済成長期に汚染され「死の海」と呼ばれた瀬戸内海。水質の改善とともに起こった「貧栄養化」問題に、国も再び方針を転換し始めている。
兵庫県明石市の西二見漁港。岸から約2キロ離れた漁場で漁師が網を引き揚げると、ノリが一面、黄色く色落ちしていた。「これはひどい……」と表情が曇る。周辺の網で、約8割が色落ちしているという。西二見漁業協同組合理事の山本義則さん(63)は、届いた栄養塩のデータを見て「やばい。だいぶ減っている」と肩を落とした。10日前と比べ、特に沖合の漁場で栄養塩が減っていた。
貧栄養化が進むと、ノリは色素の合成ができず、黒く色づかない。さらに、味や香りも落ちるという。地元では、今年の売り上げが例年の5割減、出荷量は7割減になった漁業者もいる。養殖ノリを作って40年以上の山本さんは「30年ぐらい前は、海に力があった。ノリも真っ黒で、紫がかっていた。最近は本当に生育が悪い」と嘆く。
加えて今年は、海水温の上昇で網を張る時期が遅れたことや、年末の寒波で海が荒れ、多くの網が破れてしまったことも追い打ちをかけた。
貧栄養化の影響を受けているの…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル